北海道・知床沖で観光船が沈没した事故は、発生から2週間がたった。

 乗客・乗員26人のうち、これまでに14人の死亡が確認された。まだ見つかっていない12人の捜索が急がれる。

 惨事を招いた要因として、ずさんな運航管理体制が次々と明らかになっている。

 運航会社の社長は、波浪注意報が出たことを知りながら、海が荒れれば船長の判断で引き返すという「条件付き」で出航を決めたと説明している。

 波高1メートル以上が予想される場合は出航を中止するという安全管理規程に反しており、出航が認められない状況だった。

 現地の運航業者4社でつくる協議会は非常時に備え、複数の船で海に出ることにしている。だが、事故は単独で営業を開始した初日に起き、利益優先ともいえる姿勢が浮かび上がる。

 通信手段についても信じがたいお粗末さだった。

 事故3日前に船舶安全法に基づく検査を受けた際、衛星携帯電話から携帯電話に変更を申し出ていたが、船長の携帯電話は航路上の大半が圏外だった。無線は、事務所のアンテナが破損したまま放置されていた。

 沈没しかかっているとの観光船からの無線連絡に気付いたのは同業他社で、海上保安庁に救助を求める通報は乗客の携帯電話からだった。

 社長は運航管理者として原則事務所にいなくてはならないにもかかわらず、航行中は外出して不在だった。運航管理補助者もいなかった。

 異変の把握が遅れ、予想された危険を回避するための指示もできなかったのではないか。乗客の生命を預かる意識があまりにも希薄だったと言わざるを得ない。

 第1管区海上保安本部は業務上過失致死の疑いで、社長と船長の強制捜査に乗り出している。出航判断や安全管理体制に違反はなかったのか、捜査を尽くしてほしい。

 同社は昨年、事故を2回起こした。5月には浮遊物と衝突して乗客3人が軽傷を負った。6月には座礁事故を起こし、今回と同じ船長が業務上過失往来危険容疑で書類送検された。

 今の社長になってからベテラン従業員の離職が相次いだという。2年前に赴任した船長の経験不足を指摘する声もある。

 事故を続けて起こし、自然条件の厳しい海域での観光船運航業者として適切だったのか、疑問を抱かざるを得ない。

 同社への監査や指導を行ってきた国土交通省の対応が厳しく問われよう。

 今回の事故を受けて同省は小型旅客船の安全対策を検討する有識者委員会を設置した。省内の体制見直しも含め、事故の再発防止策を講じるべきだ。

 同省は海底に沈んでいる観光船を引き揚げる方針だ。

 不明者の捜索や事故原因の解明に不可欠だが、海上運送法で沈没船の引き揚げは事業者の義務ではなく、億単位の費用が見込まれる。

 法に引き揚げに関する規定を設けるなど、費用負担の在り方も検討する必要があるだろう。