ロシアのウクライナ侵攻を受けた原油など燃料価格の高騰が、国内の電力供給を揺るがしている。

 発電や卸電力市場から調達するコストの大幅増が、電力会社の経営を圧迫しているためだ。

 小売り自由化で参入した新電力の倒産、撤退が相次ぐ中、採算面から新たな契約先が見つからない企業・法人が急増している。

 燃料費の変動を反映させる家庭向けの料金制度も価格調整のほぼ上限に達している。長期化を見据えて電力各社が抜本的な値上げに動けば、経済全体への大きな打撃となる懸念が拭えない。

 政府は、世界的な脱炭素の流れとコスト高騰を踏まえ、安定供給を確保するエネルギー政策の練り直しが必要だろう。

 現在、日本の発電量の7割超は火力発電が担っており、燃料はほぼ輸入に頼る状況にある。

 昨年来の資源価格の上昇にウクライナ危機が拍車をかけ、原油や液化天然ガス(LNG)が高騰している。ロシア産への経済制裁が広がり、石炭価格も昨年に比べて倍以上という。

 火力燃料費は、関西電力で前年度比約1100億円増えるなど重荷となり、大手電力10社の今年3月期決算は軒並み赤字や減益に落ち込んでいる。

 より打撃が大きいのが、自前の発電所を持たず、卸電力市場からの調達に頼る新電力だ。経済産業省によると、昨年1月以降に約30社の新電力が撤退した。民間の倒産統計でも昨年度の14件は過去最多である。

 卸電力の今年3月の取引価格は前年同月の約4倍に高騰しており、顧客と契約した販売価格を調達価格が上回る「逆ざや」となるケースが多いという。

 この状況が続けば、経営困難となる新電力が相次ぐ恐れがある。事業者は、調達方法や販売契約の見直しを含め、事業継続の取り組みと見通しの説明が求められよう。

 心配なのが、新電力の撤退などで切り替え先の見つからない企業・法人だ。ただちに電力が止まるのではなく、大手電力の送配電会社が割高な料金で給電する「最終保障供給制度」が当面は利用できる。

 その適用は2月末に875件だったが、先月15日時点で4098件に上っている。電力各社が、燃料費高騰による採算悪化を理由に法人の切り替え契約を事実上停止しているからだ。

 自治体でも切り替えの入札に応札が見込めず、割高な保障制度による予算増に頭を悩ましている。さらに急激な燃料高によって市場価格より保障制度の方が安くなる「逆転現象」も懸念されている。

 このため政府は、卸市場価格を保障制度の利用料金に迅速に反映させる仕組みに見直す方針だ。セーフティーネットである保障制度が長期間使われて自由な価格競争を阻害し、事業者間の不公平が生じないために必要だろう。

 3月には関東、東北で初の電力需給逼迫(ひっぱく)警報が出されるなど供給力の課題も抱える。化石燃料への依存を減らしつつ、再生可能エネルギーの主力化を加速させねばならない。省エネ・節電の取り組みも重要だ。