ジビエの加工・流通会社を立ち上げる(左から)笠井さん、江口さん、山本さん。「捨てられる命を無くし、限りある資源が循環する社会にしたい」(京都府笠置町笠置)

ジビエの加工・流通会社を立ち上げる(左から)笠井さん、江口さん、山本さん。「捨てられる命を無くし、限りある資源が循環する社会にしたい」(京都府笠置町笠置)

ジビエ生産者に弟子入りし、教わった手順でイノシシを解体する学生たち(徳島県那賀町)

ジビエ生産者に弟子入りし、教わった手順でイノシシを解体する学生たち(徳島県那賀町)

 龍谷大の学生3人が、獣害をもたらすシカやイノシシをジビエ(野生鳥獣肉)として加工・流通させる会社を京都府笠置町で立ち上げる。獣害を受ける人の怒りと、粗末に扱われる野生動物の命。二つの課題を解決するために起業を決意した。ジビエ生産者に弟子入りして解体・加工する技術を習得。イスラム教徒の戒律に従った「ハラル」認証も取得予定で、3人は「命を無駄にせず、次の命へとつないでいきたい」と大きな志を抱く。

 同大学政策学部4年の笠井大輝さん(22)、江口和さん(22)、山本海都さん(22)。ゼミで実践的に地域課題を学び、「アクションを起こさなければ何も変えられない」と就職ではなく、起業の道を選んだ。
 特に印象に残ったのが獣害。府北部で有害鳥獣の埋設場所を訪れると、捕獲・処分された大量のシカやイノシシが無残に捨てられていた。「こんなことがあっていいのか」と衝撃を受けた。一方、被害を受けた住民には動物への怒りが渦巻いていた。至った結論は「命を無駄にしない」。駆除された動物をジビエとして生かす会社を起こそうと決めた。
 3人は5月、徳島県のジビエ生産者へ弟子入りを志願。1カ月半、住み込みで家事や農作業を手伝いながら解体や加工を学んだ。
 食肉に臭みを残さないよう素早く血を抜くため、心臓が動いている状態でとどめを刺す。「最初は手が震えたり、涙が出たりした」。でも、山積みで廃棄された動物が目に浮かんだ。「自分たちがやらなければ、あんな風に処分される」。覚悟は決まった。
 その後、笠置町と関わりのある同大学や京都信用金庫を通じて同町と縁ができた。府北部に比べれば獣害は少ないものの、家庭菜園を荒らされるなど統計には計上されない被害も多いことから、起業の地に選んだ。10月から町のお試し住宅に移り住み、共同生活を送りながら起業の準備を進めている。今月中にも会社を設立し、町内に加工場を建てて来年1月下旬の操業開始を目指す。
 町内の捕獲数だけで採算が合うかといった課題もある。すでに狩猟免許を取得した3人は、わな猟に乗り出すほか、町の猟友会とも連携を図る。シカ肉でハラル認証を取得し、多彩な調理法を知るイスラム教徒向けに、さまざまな部位を流通させたいと考える。「限りある資源を循環させる社会にしたい」。3人は確かな未来を見据えて走りだす。