香港政府トップを決める行政長官選挙で、李家超前政務官が当選し、新長官に決まった。

 選挙といっても、立候補を中国政府に唯一認められた李氏への信任投票だった。一般市民に投票権はなく、親中派がほぼ独占している選挙委員(定数1500)の99%以上の支持を得たという。

 民主派の排除を目的に、昨年5月に導入された香港の新たな選挙制度によるもので、民意の反映には程遠い。

 李氏は、香港返還後で初の警察出身の長官となり、民主派への強硬姿勢を続ける構えだ。香港の自治と自由への統制強化が一層進むことが懸念される。

 今回の長官選挙では、現職の林鄭月娥氏が5年間の任期満了での退任を表明。李氏を中国政府当局者が「中央政府が支持する唯一の候補者」と認めたことで、対抗馬となる他の有力政治家らが立候補を断念した。

 中国・習近平指導部が求める「愛国者による香港統治」に基づき、中国政府が認めなければ立候補できない新選挙制度による事前選別が働いたといえる。

 新制度は、2019年の反政府デモなどで勢力を拡大した民主派の徹底排除を狙った。導入後の選挙委員、立法会議員の選挙とも民主派はゼロとなっている。今回で全ての選挙に適用され、習指導部が強行した香港の政治体制支配が行き渡った形だ。

 李氏は、香港政府治安トップの保安局長としてデモ抑圧や香港国家安全維持法(国安法)による民主派摘発を主導。対中批判を続けた香港紙、蘋果日報(リンゴ日報)も廃刊に追い込んだ。それが評価され、昨年6月に政府ナンバー2の政務官に昇格した。

 当選後に記者会見し、国家への反逆などを罰する国家安全条例の制定を推進する姿勢を示した。過去に市民の反対で頓挫した統制強化の法案を復活させるとの危惧が現実味を帯びている。

 李氏は、香港返還25年の記念日に当たる7月1日に就任する。選挙結果を受け、中国政府は、香港に高度の自治を認めた「一国二制度」を堅持すると表明したが、その変質、空洞化は隠せるものでない。

 国際ジャーナリスト組織が先週発表した「報道の自由度ランキング」で、香港は148位と昨年の80位から急落した。

 政治や市民の権利の抑圧が社会の活力低下を招き、世界から厳しい目を向けられていることを中国・香港両政府は自覚すべきだ。