ロシアのプーチン大統領は、第2次世界大戦の対ナチス・ドイツ戦勝記念日式典の演説で、ウクライナ侵攻について「やむを得ない、唯一の正しい決定だった」と主張した。

 北大西洋条約機構(NATO)側がウクライナに最新兵器を提供し、ロシアの安全保障に脅威を与えたことに先制的に対処するための措置だと言うのだ。

 言い分が道理に合わないことは明白だ。

 隣り合う主権国家に武力で攻め入り、多数の人々を犠牲にしている侵略行為は断じて正当化できない。

 侵攻開始から2カ月半となり、戦勝記念日でのプーチン氏の発言が注目されていた。

 「NATO諸国は耳を貸さなかった」と言及したのは、ロシアがNATO不拡大を求めた提案に対し、米国が今年1月に拒否したことを指しているのだろう。身勝手な責任転嫁に他ならない。

 ウクライナの親ロ派への支援を「祖国の将来のための戦い」と位置付け、欧米との対決姿勢を明確にして今後も続けるとした。戦闘の激化と長期化への懸念が増したと言わざるをえない。

 プーチン氏がウクライナを「ネオナチ主義者」と決めつけ、「非ナチ化」を侵攻の大義名分とするのも、全く筋が通らない。

 旧ソ連がナチス・ドイツをはね返した「神聖な戦い」と重ね合わせようとしているが、一方的な侵略で蛮行に出ているのはロシアの方だ。

 侵攻した地域では虐殺された市民が確認され、民間人が避難していた劇場や学校などへの攻撃が繰り返されている。犠牲者は数万人に達しているとみられる。

 ロシア軍は当初、首都キーウを短期間で陥落させる狙いだったが、反撃に遭って頓挫した。

 東部ドンバス地域に戦力を重点配置して掌握を狙うが、難航している。プーチン氏は戦勝記念日に「戦果」を示すことができず、主張に焦りがにじむ。

 ロシア側の戦死者は約1万5千人にのぼるとの推計がある。「戦争」状態を宣言して大規模動員を図るとの観測もあったが、見送られた。

 当初の作戦の誤りを認めることにつながるうえ、大量徴兵により国民の反発を招くことを恐れたとの見方もある。

 プーチン氏の論理と計画の破綻は明らかだ。非道極まりない軍事侵攻を一刻も早く停止すべきだ。