その題名は、読み手に謎をかけるかのようだ。「当事者は嘘(うそ)をつく」(筑摩書房)。著者で哲学研究者の小松原織香さん(39)は、性暴力の被害経験から生き延びた経験をノンフィクションとして描いた。一方で本書は「ハッピーエンドのファンタジーでもある」と語る。多面的な性格を持つ書物を描いた著者の「真意」はどこにあるのか。話を聞いた。

■物語のような仕掛けに

 -性暴力被害という重いテーマでありながら、読者に語りかけるような文章が印象的です。

 「執筆を始めるに際し決めていたのは、ハッピーエンドにすることです。性暴力被害のサバイバーだった若い女性が最終的に研究者になるという成長譚(たん)を描きたかった。性暴力の経験も詳細は描いていない。書きたくなかったのもあるけれど、細部はそれほど重要ではない。被害経験は異世界の出来事のようで当事者以外には伝わりにくい。だから被害経験の絶望をトリガーにして、物語のように読んでもらえる仕掛けにしました」

 -自身がフラッシュバックに苦しんだり自助グループでメンバーの語りに心を震わせたり、切ったら血の出るような言葉もつづられます。

 「私自身は今回、