多くの乗客の死亡が確認され、行方不明者の捜索が続く北海道・知床沖の観光船沈没事故を受け、運航事業者に対する国の検査、監督が適切だったか、問う声が上がっている。

 国土交通省は今週、観光船を含む小型旅客船の安全確保策について検討する有識者委員会の初会合を開き、法的規制や監査を強化する方針を示した。

 悲惨な事故を、二度と繰り返してはならない。委員会の議論を踏まえて、実効性のある対策を打ち出してもらいたい。

 旅客船の事業者には、出航する際の基準となる風速、波の高さなどについて明記した「安全管理規程」の作成と、国への届け出が義務付けられている。

 ところが、事故を起こした観光船の運航会社「知床遊覧船」は、波高1メートル以上が予想される場合、出航を中止するとの規程に従わないケースがあったとされる。

 運航管理者を務める社長は航行中、同社の事務所にいなくてはならないが、外出していたことなども明らかになった。

 違反が繰り返されており、第1管区海上保安本部が業務上過失致死の疑いで捜査している。

 初会合で、規程を順守させるため、委員から厳罰化を進めるべきとの意見が出たのは当然だ。

 関係する海上運送法や船舶安全法を改正して、事業者に安全管理を徹底させる必要があろう。

 ただ、今回の事故で最も悔やまれるのは、同社が昨年、座礁など2回の事故を起こした際に、国交省が特別監査を行い、行政指導したにもかかわらず、惨事を未然に防げなかったことではないか。

 事故直前の検査では、船長の携帯電話が航路上の大半で圏外だったことを見逃す格好となった。

 同省は2020年度、船舶運航事業者を対象に、2千件近い立ち入り検査を実施したが、事業停止や運航許可の取り消し処分は皆無である。

 これでは、業者のチェックができていないと指摘されても仕方ないだろう。

 国は、監視体制が実質的に機能するよう、こうした姿勢を改めるべきである。

 新型コロナウイルス禍によって乗客が減少したため、事業者は経費のかかる規制の強化を懸念しているという。

 また、ルールの厳格化は気象条件や通信環境を考慮して、地域別に行うよう求める意見もある。

 これらの声に配慮するのは、運航の安全性を確保してからだ。