重要なインフラや物資の安定確保を図る経済安全保障推進法が国会で成立した。来年度以降、段階的に施行される。

 ロシアによるウクライナ侵攻や米中対立などで国際情勢は激変しており、国民の生命や財産を守る安全保障と経済政策を結び付けた経済安保の重要性は高まっている。

 だが、新法の規制対象や運用は曖昧で、経済安保の定義や国の役割も不明確だ。企業活動に国の関与が強まり、自由な経済活動を萎縮させるとの懸念は依然として消えていない。

 経済安保法は、岸田文雄首相が今国会で最重視してきた。

 半導体などの重要物資のサプライチェーン(供給網)強化、サーバー攻撃に備えた基幹インフラの事前審査などの4本柱で構成する。国が企業の調達先を調査したり民間企業を支援したりする一方、情報漏えいに対し罰則規定も設けられている。

 問題なのは、法律に明記せず、政府の裁量によって事後的に政令と省令で決められる項目が130以上にも上ることだ。

 サプライチェーンの強化対象となる「特定重要物資」は、国会で審議せず政府が今後定めるという。指定されれば、関連産業は国の財政支援が受けられ特別扱いとなる。恣意的に選定されないよう基準やルールを明確にすることが欠かせない。

 国が行う基幹インフラの事前審査は、対象となる機器や設備が未定となっている。企業側からは審査の厳格さや手続きの煩雑さなどを心配する声もある。

 経済活動や国民生活にも大きな影響を与える重要法にかかわらず、指摘されてきた問題について国会で議論が深まらなかったのは残念だ。

 政府側は「国際情勢の変動による安保リスクは予想が難しい」と、明確な答弁を避ける場面が目立った。

 最大野党の立憲民主党は当初、「対決法案」と位置づけていたが、ロシアの軍事侵攻で経済安保への世論の関心が高まったことを受けて賛成に転じた。

 参院の委員会審議は衆院に比べ大幅に短く、衆参それぞれで法の規制と自由な経済活動の両立を政府に求める付帯決議をするにとどまった。

 政府は、国民や企業の懸念を払拭するために説明を尽くさねばならない。国会は、政府が不透明な運用を行わないよう、チェック機能を果たしてほしい。