被告が面会で京都新聞社の取材に応じた京都拘置所(京都市伏見区)

被告が面会で京都新聞社の取材に応じた京都拘置所(京都市伏見区)

被告の手紙。近く開館予定だった「ウトロ平和祈念館」の展示内容に「警告」する狙いだったと動機をつづっている

被告の手紙。近く開館予定だった「ウトロ平和祈念館」の展示内容に「警告」する狙いだったと動機をつづっている

 京都府宇治市ウトロ地区の空き家など建物7棟が焼けた事件で、非現住建造物等放火などの罪で起訴された無職の男(22)=奈良県=が、16日の初公判を前に、京都拘置所で京都新聞社の取材に応じた。男は面会や手紙で、放火は地区の在日コリアンに対する抗議だと説明し、「差別意識には基づかず、ヘイトクライムとは異なる」と持論を展開した。しかし、専門家は「差別感情を元にした典型的なヘイトクライム」と指摘する。

 【記事には、在日コリアンを対象にした民族差別に該当する文言が複数登場します。京都新聞社は、差別の実態を共有するため文言をそのまま報道します。あらゆる憎悪犯罪や憎悪表現を許さない社会をつくる一助とする目的です。

きっかけはヤフコメ

 男によると、犯行を思いついたのは、事件の10日ほど前。地区の歴史を伝えて多文化共生を目指す「ウトロ平和祈念館」が開館予定という記事を、ヤフーニュースで読んだことだった。

 記事のコメント欄に「なぜこういう施設ができるのか」「なぜ日本にこういう人たちがいるのか。日本から出て行け」といった書き込みがあり、賛同を示す「いいね」の反応が数千件ついていたといい、「事件を起こす上で指標の一つとなった」と話す。そこから男は3~4日かけ、ネットでウトロ地区の記事を読んだり、ユーチューブで歴史背景を学んだりして、「ウトロは不法占拠」という考えに至った。

犯罪だと認識も「在日コリアンに恐怖与えるため」

 ウトロ地区を巡っては、過去に土地の明け渡しを求めて所有企業が提訴し、最高裁は住民の立ち退きを命じたが、その後、支援者や韓国政府の出資を得た財団が地区の約3分の1の土地を購入。国や府、宇治市が住環境改善事業を進め、新たな住まいとして市営住宅1期棟が完成している。

 しかし、男は、この訴訟中に地区に設置された「立ち退き反対」などの看板が、祈念館に展示されることに問題を覚えるようになった。「展示は、過去の経緯の正当化ととられて当然。不快感を抱く人は何千、何万もいる」として、放火によって抗議の意思を示すことにしたという。

 抗議するならスピーチや文書など別の手段があったのではと問うと、言葉による発信では知名度や信頼が求められることから「(発言の内容が)広がるか疑問。賛同者を得るにも時間がかかる」と答えた。さらに、放火を選んだ理由について「犯罪という認識はあったが、何が問題かと言うことを人々に瞬時に判断してもらうため」「展示品を使用できなくすれば、関係者が対応を迫られると考えた」と説明。「在日コリアンに恐怖感を与えることを意識した」と述べた。