フィンランド政府首脳は、米欧の軍事同盟、北大西洋条約機構(NATO)への加盟を速やかに申請する方針を声明で発表した。

 隣国ロシアによるウクライナ侵攻を受け、安全保障への強い危機意識の表れである。

 スウェーデン政府も週明けにも申請方針を表明する見通しだ。伝統的に軍事中立を取ってきた北欧2カ国が路線変更にかじを切ることになる。

 ロシアは強く反発し、北欧でも緊張が高まる恐れがある。

 ただ、この状況を招いた責任はロシアにある。ウクライナ侵攻の理由にNATO拡大阻止を掲げたが、逆に北欧を加盟に駆り立てて自らの首を絞めた。その愚かさを自覚し、侵略をやめるべきだ。

 「NATO加盟はフィンランドの安全を高める」。マリン首相らの声明はNATOの集団防衛義務による抑止に期待を込めた。

 加盟国が軍事攻撃を受けた場合、全加盟国への攻撃とみなし、武力行使を含む必要な行動をただちに取ると規定しているからだ。

 フィンランドはロシアと1300キロの国境で接している。NATO非加盟だったウクライナの二の舞いを恐れるのも無理はない。

 歴史的にも東の大国に脅かされ続けてきた。19世紀初めに帝政ロシアに組み込まれ、ロシア革命を機に独立したが、第2次大戦中にソ連に2回侵攻され、約10万人の命と領土の1割を奪われた。

 戦後もソ連、ロシアを刺激しないよう非同盟を貫き、欧州連合(EU)加入の一方でロシアとの結び付きも保ってきた。

 それがロシア軍侵攻の重大性から従来原則を覆してウクライナへ武器支援に踏み切った。さらに国民のNATO加盟支持は侵攻前の20%程度から3月は62%、ロシアの残虐行為が次々判明した5月上旬は76%に急伸。世論の劇的な変化が路線転換を後押しした形だ。

 北欧の動きにロシアは、軍事面を含む対抗措置を取るといら立つ。北欧周辺への核配備もちらつかせてけん制する。

 フィンランドは来月末のNATO首脳会議までに申請する見通し。全加盟国の承認が必要で、その間にロシアが軍事行動に出る恐れもあり、迅速な手続きが不可欠だ。

 北欧の「緩衝地帯」がなくなり、ロシアとNATOが直接向き合うことになる。局地的、偶発的な衝突が、全面的に拡大する恐れも否定できない。対話による外交的解決への努力も一層求められる。