ヘイトスピーチ(憎悪表現)対策法の施行からあすで3年になる。

 国外出身者とその子孫の排除を扇動する不当な差別的言動は許されないとし、国と地方自治体に解消に向けた取り組みを求めた。だが、残念ながら街頭宣伝によるヘイトスピーチや悪質なネット投稿は絶えない。

 条例の制定や公的施設使用の指針作りなど自治体の取り組みは一定進んだが、憲法に定められた表現の自由との兼ね合いから対策法に禁止規定や罰則がなく、規制が難しいからだ。

 4月からは外国人労働者の受け入れ拡大も始まっている。悪質な差別的言動を許さないためには、法改正も視野に実態をふまえた包括的な取り組みの強化が欠かせない。

 対策法の原点は、欧米でネオナチによるヘイトスピーチやヘイトクライム(憎悪犯罪)が続発したことへの危機感から、国連総会で1965年に採択された人種差別撤廃条約だ。

 日本は95年に加盟し、義務として差別禁止法制定などを求められていたが、長年放置していた。在日コリアンらへのヘイトスピーチが社会問題化する中、緊急対策としてようやく制定されたのが対策法だった。

 ただ、罰則のない理念法のため、とりあえずスタートしたものの差別言動を抑制する実効性は不十分だ。

 横行するネットへの差別投稿の罪を問うにも、対策法ではできないので刑法を適用することになるが、実際には大半が処罰されておらず、立件され刑罰まで行き着いたことが判明したのは2件にすぎない。

 しかも1件は侮辱罪で科料9千円、もう1件は2人が名誉毀損(きそん)罪でそれぞれ罰金10万円の略式命令で、刑罰が軽いとの批判もある。

 尊厳回復を求め被害者が民事訴訟を起こしても、被害を追体験して苦しい思いをしなければならず、訴訟費用の負担も大きい。被害者には酷な話だろう。

 法務省人権擁護局は3月、ネット上の差別について、個人だけでなく集団に向けられた場合でも、削除要請などの人権救済措置の対象となることを各地方法務局に通知した。

 これまでも個人を標的にしたネット上のヘイトには対応してきたが、「○○に住む在日」「○○朝鮮学校の生徒」などの表現があれば、そこに属する個人が被害を受けたことになり対処できると判断したという。

 ただ、削除要請に法的強制力はなく、管理者任せだ。「○○人」といった大きな枠組みの集団への差別的言動も依然、救済の対象外だ。

 ドイツではヘイトなどの投稿の削除をフェイスブックやツイッターに義務づけ、期限や罰則を設けている。表現の自由と折り合いをつけつつ、差別的言動をなくしていく規制のあり方を探らねばならない。

 大阪府北部地震や熊本地震では、在日外国人への差別をデマであおり、心を傷つける悪質な投稿もネット上で相次いだ。実効性のある対策法に向け、不断の見直しを進めていくことが必要だ。