潜伏キリシタンが受け継ぎ、修復された「雪のサンタマリア」。上はローマ法王に贈られる複製品(京都市左京区・宇佐美修徳堂)

潜伏キリシタンが受け継ぎ、修復された「雪のサンタマリア」。上はローマ法王に贈られる複製品(京都市左京区・宇佐美修徳堂)

 豊臣秀吉や江戸幕府から弾圧された潜伏キリシタンが、400年近く守り伝えてきた絵画「雪のサンタマリア」が、京都市内の文化財修復会社によって修復された。和紙に西洋技法で描かれた聖母マリア像は、日本の禁教史を象徴する重要な史料とされ、竹筒に隠し持ったことで刻まれたしわや、近世に補修された跡をとどめた形で修理した。複製品も作成され、今月下旬に来日するローマ法王に贈られる。

 雪のサンタマリア(縦28・1センチ、横21・8センチ)は、キリスト教伝来後の16世紀末から17世紀初頭に日本で制作された。イエズス会士でイタリア人画家のジョヴァンニ・コーラに教わった日本人が描いたとみられる。弾圧が始まると、長崎の潜伏キリシタンによって受け継がれ、現在は日本二十六聖人記念館(長崎市)が所蔵している。
 大規模修復は近代以降では初めてとなり、京表具の「宇佐美松鶴堂」8代目の次男で、「宇佐美修徳堂」(左京区)を経営する宇佐美直治さん(56)が手掛けた。軸装された表具をいったん解体し、薄い和紙や接着力の弱い糊(のり)で補強する一方、信仰の苦難を物語るしわや、潜伏キリシタンが補修のために貼った唐紙はそのまま残した。
 複製品は、記念館長を務めたイエズス会のデ・ルカ・レンゾ日本管区長の依頼を受け、宇佐美さんが作成した。和紙にデジタル印刷する技術を用いつつ、しわや欠損まで精巧に再現することで、長い時代を経た原本の姿に近づけた。
 宇佐美さんは「大きなサイズの絵ではないが、温かい風合いや補修の跡から命を懸けて守り伝えた潜伏キリシタンの思いが伝わってきた。10月までの約7カ月間、修復や複製品作成に関わったが、貴重な文化財をお返しできてほっとした気持ちと、手から離れてしまって寂しい思いを同時に感じている」と話している。
 日本二十六聖人記念館は「修復後もこれまで通り、信仰の歴史を物語る聖画として多くの人に見てもらえるように展示したい」としており、複製品は長崎を訪れるローマ法王に手渡されるという。