彦根城(滋賀県彦根市)の国宝・天守前で、約40年間、早朝ラジオ体操を続けてきた市民らに対し、城を所有する市が開場時間(午前8時半~午後5時)以外に入場できないよう施錠を始めた17日朝、参加者らは突然の「厳格措置」に困惑しながらも、城内の代替地での活動に切り替えた。
参加者らはこれまで、開場前の午前6時半に体操するため、大手門など3カ所を通って天守前の広場に登っていた。市は今回、時間外は全ての門を施錠することにし、この日は同6時ごろから、文化財課の井伊岳夫課長ら職員が各門に立ち、対応に当たった。
各門には「営業時間外につき施錠中」との掲示もされ、参加者らは口々に「残念」「仕方ない」と言い、入場できないことを知った数人がそのまま帰ったという。市によると、トラブルはなかった。
大手門を訪れた市内の男性(75)は「約20年間参加してきた。今日から天守前に上がれず寂しいが、防災面も考え、市の決定に従う」と話し、別のラジオ体操会場となっている内堀沿いの二の丸駐車場に向かった。
同駐車場には、市に活動継続を求めた「天守で健康づくりをする会」代表の村川晃司さん(80)ら男女32人が集まり、「天守や城下の景色が見えない」と苦笑しながら、同6時半に体操を開始。ある男性(78)は「ユニホームを着用したり、入退場を管理するシステムを導入すれば、天守で活動を再開できるのでは」と願った。
市は当面、各門に対応要員を配置する予定で、井伊課長は「市のシンボルの城を後世に残すため、今後もご理解と協力をお願いしたい」と話した。