国内の物価高が顕著になっている。政府、日銀は金融緩和政策の修正を含め抜本的な対応を考える時に来ているのではないか。

 総務省と日銀が相次ぎ発表した4月の速報値によると、東京都区部の消費者物価指数は前年同月比1・9%上昇で7年ぶりの伸び率になった。国内企業物価指数は前年同月比10・0%上昇で1960年の統計開始以降で最高水準だった。

 ロシアのウクライナ侵攻などに伴う原油や原材料の高騰に加え、円安よる輸入価格の上昇が大きく影響している。物価高はさらに進む可能性も指摘される。構造的な背景があるからだ。

 物価高対策として米国が従来の金融緩和政策を転換し、利上げを加速するのに対し、日本はなおもデフレ脱却を掲げたまま大規模な金融緩和を続ける。投資家は金利の高いドルを買い、低金利の円を売るため円安が進むことになる。

 日銀の黒田東彦総裁は「物価高は一時的」「全体として円安はプラス」と繰り返す。確かに円安で輸出や海外収益が膨らみ、自動車など製造業を中心に業績が急拡大している。京都経済を先導する大手電子部品メーカーも、軒並み過去最高の売上高だった。

 だが、国内雇用の7割を占める中小企業は円安による燃料や原材料価格上昇のしわ寄せを受けやすく、海外生産が進んだ大企業にも「かつてほどのメリットはない」との声が多い。共同通信の主要企業アンケートでも現状を「良い円安」とした企業はゼロで、「悪い円安」との警戒感が際立つ。

 政府は物価高に対応する6・2兆円の緊急経済対策を先月決めたが、ガソリン価格抑制に向けた補助金や低所得子育て世帯への5万円給付など、参院選対策の一時しのぎの感が否めない。

 そもそも日銀が円安―物価高のアクセルを踏み、政府がブレーキをかける不整合に目をつぶったままでは効果に限界がある。

 劇薬である「異次元」の金融緩和の副作用が、経済環境の激変で「悪い物価高」として顕在化している。中国経済もゼロコロナ政策などで減速しており、さらなるリスク要因といえる。

 日銀は景気に目を配りつつ、長短の金利操作見直しなど段階的な金融正常化を検討し、政府は財政健全化や再生エネルギーの主軸化、省エネの強化など長期的な抜本策を示す必要がある。

 大企業も賃上げや下請け代金の上乗せなどで利益を還元し、経済の好循環を目指してもらいたい。