法相の諮問機関である法制審議会の部会は、戸籍の氏名に新たに付ける読み仮名で本来と異なる読み方をどこまで認めるか、三つの基準案を中間試案で示した。

 戸籍法では氏名の読み仮名に関する規定がない。行政のデジタル化に合わせて平仮名や片仮名の読み仮名をつけることで、個人データを検索しやすくし、事務処理の効率化を図るのが目的という。

 だが、そもそも今になってなぜ全国民の戸籍の氏名に読み仮名を定めようというのか。

 ほとんどの自治体は、出生届や婚姻届などに名前の読み仮名を書く欄を設けており、どう読むかはわかっている。

 政府による個人のデータ管理が進むこと対して、懸念の声もある。政府は、意図を明確にするとともに、情報管理の過程や安全性についても国民に丁寧に説明する必要がある。

 部会の案は、「戸籍法に定めず、権利の乱用がなく公序良俗に反しないなど一般原則に基づき判断」「音訓読みや慣用で読まれ、または字の意味と関連があるものを許容」などを挙げている。

 漢字本来と異なる読み方や漢字のイメージを読み仮名にした、いわゆる「キラキラネーム」が念頭にあるようだ。

 「大空(すかい)」「光宙(ぴかちゅう)」は、字の意味との関連があることなどから認められそうだ。

 一方、「山田太郎」を字の音訓や意味と関連のない「てつわんあとむ」としたり、「高」を逆の意味の「ひくし」と読ませるのは認められない可能性があるという。

 名前は、その人のアイデンティティーそのものであり、名付ける人の願いなども込められている。基準や判断によっては混乱が生じかねない。

 懸念されるのは、自治体の負担が増加することだ。

 新生児や日本国籍を得る人らが初めて戸籍を取得する場合だけでなく、全国民も戸籍に読み仮名を付ける。市町村窓口が届け出先となるため膨大な作業が予想され、認められる読み仮名になっているか難しい判断も迫られる。

 今回の制度改正は、政府の2020年の「デジタル・ガバメント実行計画」に基づく。マイナンバーカードの海外利用開始に合わせ、氏名をカードにローマ字表記できる狙いもある。

 その労力や懸念に見合ったメリットがあるのか、いま一度根本の議論を求めたい。