子ども政策の司令塔を目指す「こども家庭庁」の設置関連法案が衆院を通過し、今国会で成立する見通しとなった。

 虐待や貧困、少子化対策など多岐にわたる課題の解決を掲げ、省庁にまたがる担当部署を集約した新組織が来年4月に発足する。

 だが、小中学校などの教育に関する権限は文部科学省に残る。長年の懸案である就学前施設をまとめる「幼保一元化」も見送られた。

 菅義偉前首相が「縦割り打破の象徴」として打ち出したが、縦割りは残った。子どもに関する政策をどう充実させるのか、中途半端な印象は拭えない。組織の「器」だけでなく、具体的な中身を示すべきだ。

 同庁は内閣府外局の首相直属機関で、内閣府と厚生労働省の子ども関連部署を移管する。教育や学校でのいじめ、不登校対策などは文科省が引き続き所管する。学校と福祉、地域などの連携対応で壁は残ることになる。

 政府は、各省庁に対して一段高い立場から総合調整を行うとし、他省庁の政策が不十分な場合に是正を求める「勧告権」を担当閣僚に与えるとしている。だが、同様の権限を持った担当相が発動した例はなく、本当に機能するのか疑問だ。

 そもそも日本の子育て関連支出は、国内総生産(GDP)比2%に満たず、欧米主要国より低水準にとどまり続けている。

 岸田文雄首相は予算を倍増する方針を表明しているが、期限や財源をどうするかは明らかにしていない。参院の審議では見通しや具体的な内容をきちんと示さねばならない。

 子どもの権利擁護のために、首相の諮問機関「こども家庭審議会」を置くとしているが、いかに独立性や権限を確保し、子どもの意見を反映させるかが課題だ。

 新庁は民間人材も含め300人超規模になるという。昨年9月に鳴り物入りで新設されたが、「役割分担が不明」「風通しが悪い」などの不満が出ているデジタル庁の二の舞いを演じてはならない。

 当初の「こども庁」構想から「家庭」が名称に加えられたのは、自民党内の「子どもの育ちは家庭を基盤としている」との意見に押されたためだ。虐待や貧困などの社会的課題への視点がぼやけたのは否めない。

 子どもに関わる問題を家庭の問題にとどめず、社会全体の課題として解決策を探っていくことこそ、求められる役割のはずだ。