民事裁判の形が大きく変わることになる。

 提訴から判決まで全ての手続きをオンライン化できる改正民事訴訟法などが成立した。効率化、迅速化が期待される一方、情報漏えい対策など課題も残る。

 紙の書面や対面でのやりとりが基本だった訴訟の流れをオンラインやペーパーレスにして効率化する制度改革と言える。その柱は、インターネットを通じた訴状提出▽ウェブ会議での審理への参加▽書類の電子データでの管理・ネット上での確認―の3点だ。

 経済界を中心に訴訟の利便性などで海外に後れを取っているとの批判が強かった。2025年度までに順次実施されるが、時代の要請であり、避けて通れまい。

 出廷や打ち合わせのための手間や時間、出費は小さくない。口頭弁論や証人尋問をウェブ会議で済ませられるならば、当事者の負担はかなり軽減されよう。

 ただ改正法は付帯決議で、訴訟記録の流出対策などを求めている。実施に当たって留意すべき課題が少なくないということだ。

 弁護士ら代理人にオンライン提訴を義務付けるが、誰もがIT機器に精通しているわけではない。高齢者らデジタル弱者などに配慮し、代理人を選任しない本人訴訟を除外したのは妥当である。

 政府は、いずれは本人訴訟も含め全てをオンライン提訴にしたい意向だ。だが本人訴訟は現在、民事裁判のおよそ半数を占める。憲法が定める「裁判を受ける権利」を妨げてはならない。

 裁判官は書面だけでなく、原告や証人らの声を法廷で直接聞いて判決に至る心証を得てきた。モニター越しで適切な判断ができるのだろうか。憲法の「裁判公開の原則」を保障するため、法廷に設けるモニターでの傍聴を認めるが、公開裁判の形骸化を招いてはならない。証人へのなりすまし対策なども欠かせない。

 大量の資料や訴訟記録はデータベースで管理し、裁判の当事者はネットを通じ閲覧できる。海外ではサイバー攻撃で裁判システムが停止した事例もある。さまざまな個人情報や企業の機密情報も含まれ、セキュリティー対策の徹底は緊急に取り組むべきだろう。

 IT化で効率性を重視するあまり、審理を尽くせなかったり公平性が損なわれたりすれば司法に対する信頼が揺らぐ。拙速を避け、問題点を洗い出して改善を図りつつ、国民が安心して利用できる仕組みにしてもらいたい。