安倍晋三首相の通算在職日数がきょう、歴代1位となった。

 計7年11カ月、2887日。戦前の桂太郎を上回る記録である。

 ただ、在職期間の長さそのものに意味があるとは思えない。

 何を成し遂げてきたか、できていないことは何か。首相は自らの足跡を振り返り、今後の課題をとらえ直す機会にしてほしい。

 直視してもらいたいのは、国民の暮らしぶりについてである。

 経済政策アベノミクスは大規模金融緩和による円安・株高で好調な企業業績をもたらしたが、賃金や設備投資に資金が届かず、景気の好循環をつくれていない。

 消費税率引き上げの一方、増税で充実させるはずの社会保障の将来図は描けていない。財政再建も事実上、先送りした。生活不安はむしろ増大している感がある。

 「地方創生」「1億総活躍」など、毎年のように打ち出した看板政策も成果が上がっているとは言い難い。東京一極集中は加速し、正社員と非正規の賃金格差は誰もが活躍できる状況ではない。

 これまでの政策が及ぼした影響を総点検してみる必要があろう。

 議論を尽くさず、説明責任から逃げがちな姿勢も問われている。

 集団的自衛権行使を容認する安全保障法制や、知る権利を制限しかねない特定秘密保護法は、憲法の精神を揺るがすものだった。

 だが、国会での論戦が十分とはいえない中、採決が強行された。働き方改革関連法やカジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備法なども同様だった。

 審議を軽視し、数の力で押しきるやり方は、国会を内閣の承認機関におとしめかねず、議会制民主主義を危うくするものだ。

 森友・加計両学園を巡る疑惑では国会での説明を尽くさないまま幕引きを図ろうとしているかのようだ。今回の「桜を見る会」前夜の夕食費に関する問題も、言い逃れに終始している印象を受ける。

 懸念するのは、自民党内からこうした現状への異論がほとんど聞かれないことだ。安倍氏周辺が選挙の公認権を握る「1強」状態が沈黙を強いている。野党も安倍政権を脅かす存在にはなっていない。

 閣僚の相次ぐ不祥事は、敵らしい敵がいない長期政権の緩みやおごりを象徴しているかに見える。

 世論調査の支持率は安定しているが、決して積極的に評価されているわけではない。安倍政権を支持する理由のトップが「ほかに適当な人がいない」であることは深く認識しておくべきだろう。