政府が農林水産物や食品の輸出拡大策をまとめた。

 衛生管理の審査などの業務を農林水産省に一元化する新体制に来春にも移行する。相手国の食品安全規制に迅速に対応しながら交渉を進めるためという。

 日本食ブームに乗って輸出額は増え続けている。世界での需要はさらに拡大が見込まれ、大きな潜在力があるのは確かだろう。

 少子高齢化で国内需要が伸び悩む中、政府は農林水産物の輸出額を2019年までに1兆円に伸ばす目標を掲げている。18年に9千億円を超えた。

 食品に対する各国の規制は多い。輸出に関する実務は省庁間にまたがっており、時間がかかると事業者から不満が出ていた。

 品目ごとに各国との間で輸出規制をクリアするための条件などの交渉は農水省が手掛けている。一方で、実際に欧米向けに牛肉などを輸出する際に必要となる食品衛生管理の国際基準「HACCP(ハサップ)」の審査は厚生労働省が担当している。

 縦割り組織を見直して司令塔を明確にする―。その方向性は理解できるが、業務が一元化すると、輸出を優先して安全審査が甘くなる恐れも出てくる。

 政府は約100項目の工程表を策定し、改善に前のめりだ。品質と安全性が日本産品の評価を支えていることを忘れてはいけない。審査の透明化を図るなど信用を保つ工夫が必要ではないか。

 日本にとって大きな障壁となっているのは、東京電力福島第1原発事故を受けた各国の規制だ。事故から8年が過ぎた現在も23の国と地域が続けている。

 韓国による水産物の輸入規制を巡っては世界貿易機関(WTO)の紛争処理手続きで日本が敗訴した。政府の戦略は見直しを迫られているが、外交当局同士がさや当てを続けるなど泥沼化している。

 輸入規制の撤廃には政治の問題も絡むと専門家は指摘する。国同士の信頼関係が問われよう。

 環太平洋連携協定(TPP)発効など国内産地を取り巻く環境は厳しさを増し、日米貿易交渉の行方を懸念する声もある。

 この時期に輸出拡大策を打ち出したのは、夏の参院選を前に地方にアピールする狙いが透ける。

 手続きを迅速化しても一気に輸出が増えるものではない。生産基盤をどう強化するか、相手国の市場をいかに見極めてニーズを把握するか、地に足のついた戦略が求められる。