これまでの発想にとらわれない大胆な政策が、しっかりと打ち出されているはずである。

 政府が、先の未来投資会議に示した新たな成長戦略案とは、そういうものだと思っていたが、見当違いだったのだろうか。

 成長戦略は、安倍晋三首相が唱えるアベノミクスの「三本の矢」の一つで、「大胆な金融政策」や「機動的な財政出動」と並ぶ経済政策だ。毎年6月に取りまとめられ、日本の成長を促すことが期待されている。

 今年の案では、「巨大ITの規制強化」「70歳まで働ける雇用環境整備」「地方を支えるシステムの維持」が、主な戦略として挙げられたといえる。

 IT規制では、米グーグル、アマゾン・コムなどの頭文字から取った「GAFA」と呼ばれる巨大IT企業による不当な取引を防ぐため、規制を強める新法案を来年の通常国会に提出するという。

 確かに、電子商取引などの基盤を築いた巨大IT企業が、情報を独占したり、新規参入を阻害したりしてはならず、新法制定も必要となるだろう。

 だが、これは日本の戦略だけで解決できる問題ではなく、各国が協調して対応すべきである。

 雇用環境の整備では、70歳までの就業機会の確保を、企業の努力義務とする。その際に、再就職と起業の支援、フリーランス契約、社会貢献活動への資金提供といった方策も選べるようにする。

 これには、年金の支給を先延ばしするためだ、とする声が上がるのは避けられまい。

 結果として、企業の新陳代謝と若年層の雇用を、妨げる可能性もありそうだ。

 地方を支えるシステムの維持につながるとみられるのは、地銀の統合やバス事業者の共同経営を、10年間の時限措置で独占禁止法の適用除外とする特例法の整備や、過疎地でのマイカー有料輸送の拡大などである。

 日銀は、10年後に地銀の約6割が赤字になるという試算を公表している。バス事業では、中心市街地に複数の事業者が乗り入れる地域があり、経営が立ち行かなくなることが心配されている。対策が急務となっているのは事実だ。

 しかし、これらの施策は、明らかに事業の縮小、場合によっては撤退を伴う。

 こうして今回の案を見渡すと、いずれも、本来の意味での成長戦略とはいいにくい。再考を試みても、よいのではないか。