職場でのパワーハラスメントの防止が初めて法制化された。

 地位や立場を背景にしたパワハラを「行ってはならない」と明記し、事業者に相談体制の整備など防止対策を義務付けた。大企業は2020年4月、中小企業は22年4月から義務化される見通しだ。

 企業の自主的な対応に委ねられてきた状況から一歩前進ではあるが、罰則を伴う禁止規定はなく、どこまで抑止力につながるかは疑問符が付く。

 厚生労働省は今後、どのような行為がパワハラに当たるか指針を定める。深刻化する被害を防ぐ実効性の確保に向け、具体的な基準や措置を明示する必要がある。

 企業自身も法制化の重みを踏まえて業務の在り方を含め働く環境を点検し、ハラスメント根絶への責務を果たさねばならない。

 今国会で成立した改正労働施策総合推進法は、パワハラを(1)優越的な関係を背景に(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により(3)就業環境を害する-の三つの要件で初めて定義。企業に防止策をつくって取り組むよう義務付け、改善指導にも従わないなら企業名を公表する場合もあるとした。

 全国の労働局に寄せられたパワハラを含む「いじめ・嫌がらせ」の相談は、17年度に約7万2千件と02年度の10倍以上に増加。心身の健康を崩して休職や退職、自殺に追い込まれる被害者が後を絶たない状況からすれば、法制化は「ようやく」の感が強い。

 だが、労働側が求めた禁止規定は見送られた。「業務上の指導との線引きが難しい」と経営側が難色を示したためだが、強制力を伴わずに歯止めになるだろうか。

 セクハラでは07年に対策を義務付け、同様に禁止規定を設けなかった。17年の厚労省調査で、防止に取り組んでいる企業は7割、相談窓口担当者の研修実施は1割にとどまり、対策が浸透していないのが実態だ。

 10日からの国際労働機関(ILO)の総会では、仕事を巡るあらゆるハラスメントを禁止する条約が採択される方向だ。日本も遅れていた対策を加速させ、より踏み込んだ法整備を進めるべきだろう。

 指摘しておきたいのは、パワハラは個人の資質や指導法だけでなく、利益優先の過大な営業目標を現場に押しつけるなど企業体質による要因が少なくないことだ。

 従業員の働きがいを引き出す業務の内容、量は妥当か、何より健康と生命を守るための「働かせ方改革」も求められている。