日本の死因究明は先進国の中で遅れている。犯罪死の見逃しだけでなく、災害で亡くなった人の死因や身元を特定する体制も十分とは言えない。

 死因究明を推進する基本法が衆議院で可決成立した。2012年に2年間の時限立法が成立したが、今回は恒久法だ。

 死因の特定は、社会安定の基盤となる。これまで政府の動きは鈍く、自治体の取り組みにはバラツキがある。新法を生かせるか、本気度が問われる。

 近年は、子どもの虐待や高齢者の孤独死が深刻な問題になっている。一方で死亡数は年々増え、いわば多死社会になってきている。

 新法は、死因究明に携わる人不足から人材の育成を盛り込んでいる。さらに科学調査を重視し、磁気共鳴画像装置(MRI)などを積極活用するよう求めている。

 身元確認のためのDNA検査や死因特定の解剖結果などを、データ保存することも重要になる。行方不明者の捜索や事故の再発防止のほか、広く公衆衛生にも役立つことが期待されている。

 遺族への丁寧な説明や情報開示も忘れてはならない。

 これまで死因究明は、犯罪の有無を判断する司法解剖や検視が前面に出て、警察中心の見方になりがちだった。しかし、犯罪死だけでなく、広く死因不明に目を向ける必要がある。

 新法は、死因究明推進本部を厚生労働省に設置するとしており、新しい流れといえよう。

 政府が施策を総合的に策定し、自治体が地域に応じて施策を作り実施する。そうした役割分担が打ち出されている。

 地域差をなくすため、全国に専門機関を整備するとしている。しかし、現状をみると地域の間で取り組みの差が大きい。14年に決定された推進計画に基づき、政府は都道府県に地方協議会の設置を要請したが、実現したのは5年たっても37都道府県にとどまる。

 協議会は知事部局と医師会、歯科医師会、大学、警察などが構成メンバーで、地域の取り組みを協議する。滋賀県は熱心で全国で3番目に発足、提言も出しているが、一方で冷ややかな県もある。

 そもそも法医学の専門家が少なく、人材育成や解剖・検査への費用負担も軽くない。新法は政府の財政措置を明記しているが、十分なものになるのかどうか。

 来年4月に施行し、新しい推進計画など中身はこれからだ。人の死にきちんと向き合う社会への一歩にしないといけない。