笑顔でピースサインをする山名空君の写真を見つめる母親の三千代さん(8日、京都府京丹波町実勢)

笑顔でピースサインをする山名空君の写真を見つめる母親の三千代さん(8日、京都府京丹波町実勢)

 3人が死亡、55人が重軽傷を負った福知山市の露店爆発事故は15日、発生から5年を迎える。夏の夜空を見上げるたび、家族を亡くした悲しみに打ちひしがれる遺族たち。負傷者はやけどの後遺症と向き合う日々を送る。多くの被害関係者が再発防止を願う中、主催者側による事故の検証作業は今も手つかずのままで、専門家は「行政が主導し、原因究明に努めるべき」と指摘する。

 「お母さん、おる?」。全身にやけどを負い、10歳で亡くなった京都府京丹波町実勢の山名空君=当時小学5年=の母三千代さん(44)は、毎年8月が来ると、空君の最期の言葉を思い出す。綾部市から京都市へと転院搬送される救急車の中。か細く、かすれた声だった。体力を奪わないようにと気遣い、「ここにおるよ」とだけ返事した。空君は事故の4日後、入院先で息を引き取った。三千代さんは「当時を思い出すと、涙がこぼれてしまう。言葉にならないほどつらい」。
 心優しい息子だった。仕事で帰りが遅くなると、ご飯を炊いて待っていてくれた。「助かるわ。ありがとう」。そう声を掛けると、照れくさそうな笑顔を浮かべた。自宅リビングには、無邪気な表情で遊ぶ空君の写真が並ぶ。今年3月、中学校を卒業した空君の同級生が訪ねて来た。携帯電話の画面に空君の姿を表示させ、一緒に記念撮影した写真をプレゼントしてくれた。「忘れないでいてくれることがうれしい」と話す。
 自宅のある京丹波町では毎夏、花火大会が催されている。空君が苦しむ姿を思い出すのがつらく、打ち上げ花火の音が鳴り響くと、ずっと耳をふさいできた。今夏はふと、「空、一緒に見ようか」と思い立った。会場から離れた場所に車を止めた。夜空を照らす鮮やかな光。「少しだけならと思ったけど、やっぱり無理だった」。10分もたたないうちに、車のアクセルを踏んでいた。
 各地の花火大会や夏祭りで同じような事故が起こるたび、胸を痛める。相模原市では今月4日、祭り会場の屋台のボンベが爆発して9人が負傷した。三千代さんは「一瞬の不注意で悲しむ人が出てしまう。絶対に事故が起きないよう、安全対策を徹底してほしい」と訴える。