土日と祝日だけ出る「ぜーもんカフェ」の看板

土日と祝日だけ出る「ぜーもんカフェ」の看板

摘みたての茶葉を手にする久保さん。手間はかかるが自家製はおいしく、「お茶は買ったことがないんです」(京都市北区雲ケ畑・ぜーもんカフェ)

摘みたての茶葉を手にする久保さん。手間はかかるが自家製はおいしく、「お茶は買ったことがないんです」(京都市北区雲ケ畑・ぜーもんカフェ)

 市街地から車で約30分、深い緑に包まれた京都市北区雲ケ畑で、土日祝だけ開店する「ぜーもんカフェ」を営む。手作りのおにぎりセットやおはぎなどと一緒に出すのは、自家製のほうじ茶や花山椒(さんしょう)のつくだ煮。「どれも雲ケ畑の人たちが昔から作り続けてきた味。地域の生活文化の一端を知ってもらうきっかけになれば」との思いを込める。

 雲ケ畑は古くから薪炭採取に利用されてきた森林が多かった。久保さんが雲ケ畑に嫁いできた1966(昭和41)年、ご飯は薪で炊いていた。「ちょうど炊飯器が広がり始めた時代。そのころは茶摘みの季節になると、みんなが一斉にむしろを出して茶葉を干してました」

 毎年5月は製茶の季節だ。家の前に植えられた茶の木の新芽を摘み、蒸してから手で揉(も)み、むしろに広げて乾燥させる。天日で数日かけて乾燥させた後は瓶に詰めて保存。飲む時に炒(い)ってほうじ茶にすると香ばしさが口いっぱいに広がる。「手間はかかるんですけど、農薬を使ってないから安心だし、何より自分で作ったものはおいしい」と久保さん。

 そんな地域の暮らしを外から訪れる人たちにも伝えようと、夫とカフェを始めたのは2017年夏。「ぜーもん」は久保家の初代「善右衛門」にちなんで名付けた。ただ、夫の常次さんは開店の2カ月後に急死。以来、1人で店を切り盛りする。

 春は朝から山に入り、山椒の花や実を摘む。開店日の前日には小豆を炊いておはぎの準備をする。山間部のため1日の来店者は多くて十数人だが、「みんなの『おいしい』の声がうれしくて続けられている」と話す。

 「お父さんが残してくれた店やと思う。『誰もが気軽に立ち寄れる場所をつくりたい』との願いを、私なりに受け継いでゆければ」