核兵器を違法化した核兵器禁止条約の初の締約国会議は、「核なき世界」実現に向けて即時の行動を求める「ウィーン宣言」を採択して閉幕した。

 ウクライナに侵攻するロシアが核の威嚇を繰り返し、脅威が現実味を増している中、「核兵器の使用や核による脅しは国際法違反だ」と訴えた。

 締約国65にオブザーバーを加えた83カ国が一堂に会し、警鐘を鳴らした意義は大きい。保有国に働きかけ、宣言に実効性を持たせる努力を重ねていかねばならない。

 核禁条約は昨年1月に発効したが、米ロ中など核を保有する9カ国や、米国の「核の傘」の下にある日本は加盟していない。

 ウィーン宣言は、9カ国が計約1万3千発の核弾頭を保有していることに懸念を示し、「いかなる状況でも核の使用や威嚇をしない」ことを保有国に求めた。

 核保有国と「傘の下」にある同盟国に対して「核への依存を減らす真剣な取り組みを行っていない」とし、「核抑止論は誤りだ」との批判も盛り込んだ。

 行動計画では、「核兵器の影響を受けながらも未加盟の国と協力する」と明記。日本や核実験の被害国を念頭に協力を呼びかけた。

 核禁条約と、核保有国が加盟する核拡散防止条約(NPT)は補完関係にあることも強調した。核保有国を含む幅広い国々や市民団体、国際機関とも協調して取り組む姿勢を見せた。

 今回、広島と長崎の被爆者や市長が出席して演説したことが議論に重みを与えた。クメント議長は「被爆者らの証言が核廃絶の必要性を証明した」と評価した。被爆国だからこそ果たせる役割を認めるからこそだろう。

 にもかかわらず、唯一の戦争被爆国である日本が政府としてオブザーバー参加もしなかったことは世界や被爆者を失望させた。

 米同盟国のオーストラリアや、北大西洋条約機構(NATO)加盟国のドイツやオランダなどが、立場の違いはあってもオブザーバー参加したのとは対照的だった。

 岸田文雄首相はNPTを重視し、保有国と非保有国の橋渡し役が日本の目指すべき道だと繰り返すが、説得力に欠けると言わざるを得ない。先月の日米首脳会談で「拡大抑止」の重要性を確認したように、日本が「核の傘」への依存度を高めている現実もある。

 「核兵器のない世界」を実現するために、どう行動で示すのか、ますます問われよう。