ロシアによるウクライナへの侵攻開始から4カ月が経過した。戦闘が長期化し、これまでに子どもを含む民間人の死者は激戦の東南部を除いても4600人以上で、国内外の避難民は1500万人を超えるとされる。

 2度の世界大戦を経て国際社会が築き上げてきたルールに基づく秩序を無視した暴挙は、安全保障の在り方を巡る議論に大きな影響を与えている。

 日本を取り巻く環境を見ても、軍備拡大を続ける中国は東・南シナ海への海洋進出を強め、沖縄県・尖閣諸島周辺で公船の領海侵入を繰り返している。今年に入りすでに30発以上のミサイルを発射した北朝鮮は、核実験再開の動きをみせる。

 緊張が高まる東アジア情勢に日本はどう向き合うのかが、以前にも増して問われている。

 5月に開催された日米首脳会談では、米国が核兵器と通常戦力で日本防衛に関与する「拡大抑止」の重要性を確認した。岸田文雄首相は、防衛費の「相当な増額」への決意を伝えた。

 日本の防衛費は2013年以降毎年伸びており、22年度当初予算では5兆4千億円に上っている。

 参院選公約で自民党や日本維新の会は、現状の国内総生産(GDP)比1%程度から2%へ増やすとしており、立憲民主党や公明党も、増額は必要との立場だ。

 だが、どういう備えが不足し、何のための強化なのか。金額ありきの感が否めない。各党は、増額の中身と財源を併せて示す必要がある。

 岸田首相はまた、敵基地攻撃能力を言い換えた「反撃能力」の保有を含めあらゆる選択肢を排除しない考えも米大統領に表明している。

 与野党からは、「積極的防衛能力」の整備や「自衛のための打撃力」の保有を主張する公約もある。

 だが、日本が戦後、安全保障の原則としてきた専守防衛を逸脱しかねない。平和憲法の根幹に関わるだけに丁寧な議論が不可欠だ。

 自民内では、核兵器を米国と共同運用する「核共有」の議論を求める声さえ出ている。

 岸田首相は慎重姿勢を示し、今回の自民の公約では言及しなかったが、維新は「議論を始める」と踏み込んだ。立民や公明、共産党などは強く反対する。

 日本は唯一の戦争被爆国である。政府は非核三原則を国是として堅持する一方、米国による拡大抑止の増強を求める矛盾を抱えている。

 ロシアが核使用の威嚇を繰り返す中、危機に便乗するかのように軍拡競争をエスカレートさせるなら、逆に周辺国との緊張を高める危うさもある。

 政治に求められるのは軍事の力頼みだけでなく、対話の積み重ねによる信頼関係の構築で、地域の安定や共存共栄を探ることだ。

 その道をどう切り開いていくのか。各党は安全保障と両輪となる外交についても、方策と展望を示してもらいたい。