社寺から古い仏像や刀剣、掛け軸などが盗まれる事件が後を絶たない。盗難品がインターネットで転売されるケースも相次いでいる。

 背景には、古美術の国内外での人気やネット売買の普及に加え、仏像などを維持・管理してきた地域コミュニティーの衰えがある。高齢化や人口減少で無人の社寺が増え、住民の目も行き届かなくなっている。多くのまちにとって人ごとではないだろう。

 文化庁のホームページには、盗難28件を含む所在不明の国指定文化財が140件掲載され、情報の提供を呼びかけている。地方自治体の指定・未指定文化財の盗難事例も随時アップされている。

 いずれもかけがえのない品々だ。失ってから後悔しないために対策を急ぎたい。

 ネットのオークションサイトやフリマアプリでは、所有者が売却を希望する古美術が数多く出品されている。盗難品はそこに紛れている。

 先月には、京都市上京区の寺から1年前に盗まれた仏像(未指定)が大手オークションサイトに出品された。サイトを見た人の指摘で判明し、出品者から寺へ返却された。その後、京都府警が窃盗容疑で近所の男を逮捕した。仏像は業者らの間で転売されていたとみられる。

 古物営業法は盗難品の売買を禁じているが、対面なしで取引できるサイトの普及拡大が、転売目的の盗難につながっているようだ。

 古物商とサイト運営者には、売り手の身元や物品の来歴の確認を徹底してもらいたい。盗難品と分かれば必ず売り手を特定できる仕組みを確立するとともに、サイトが悪用されていないか常にチェックすることが不可欠だ。

 一方、住民らが文化財を共同管理している場合などでは、知らず知らずに管理が甘くなり、被害に気づくのに時間がかかったり、当該品の捜索の手がかりとなる台帳類がなかったりして対応が遅れる例があるという。

 施錠や見回りの強化に加え、万一に備えて物品の一つ一つを撮影し、サイズや特徴を記録しておきたい。虫干しや祭りなどの機会を利用すれば取り組みやすいだろう。

 2010~11年に連続60件もの文化財盗難があった和歌山県では、事件で得た教訓をまとめて県立博物館のホームページで公開している。

 被害に遭いやすいのは遠くからでもお堂や神社が確認でき、車で近づきやすく、進入路が人目に触れない場所だという。その上で、最も危ないのは住民が「無関心」な地域だと注意を促している。

 境内に普段見かけない不審な人物がいたら、顔を見て「こんにちは」と声をかけ、住民の目が光っていると言外に知らせる―。京都府内のある神社の氏子から聞いた話だ。

 それぞれの地域で対策を工夫し、文化財保護の機運を高めたい。併せて警察や文化財を所管する教育委員会は連携を強め、地元の取り組みをしっかりサポートしてもらいたい。