年金減額を知らせる通知書を手にする女性。年間の減額分5084円と記し「つらいですね」とため息をついた(15日、京都市内)※画像の一部を加工しています

年金減額を知らせる通知書を手にする女性。年間の減額分5084円と記し「つらいですね」とため息をついた(15日、京都市内)※画像の一部を加工しています

年金に対する各党の主な考え方

年金に対する各党の主な考え方

 年金減額を知らせる国からの通知書を手に京都市中京区の女性(75)は肩を落とした。「0・4%と言えど、減るのは厳しい。若い時は年金の心配なんかしなかったのに」

 一つ下の夫と年金暮らし。自身の収入は介護保険料などを差し引かれ、月10万円足らず。服は必ずバザーで買い、スーパーでは、国内産が良いと思いながらも中国産の安い食材に手が伸びてしまう。夫の年金と合わせて何とか家計をやりくりする中、物価高と年金の減額が重なった。

 今回の改定で女性の年金は年間5084円減る。さらに、今年で75歳を迎え、国民健康保険から後期高齢者医療保険に切り替わったことで保険料負担は夫婦で年間2万3千円増えた。毎年、受診している人間ドックの自己負担も国保の補助から切り離されて約3倍に。「長生きした罰ですか?」。女性は釈然としない思いをはき出した。

 業種を問わず受け取れる国民年金(基礎年金)の本年度の満額給付額は月6万4816円(前年度比259円減)。現行制度下でピークだった1999~2002年度と比べて月額2201円少ない。引き下げは2年連続。指標となる前年の物価はマイナス0・2%、過去3年間の賃金変動率はマイナス0・4%で、支え手となる現役世代の賃金低下の方を反映した形だ。会社員などが加入する厚生年金もモデル世帯で月903円の減額となる。

 一方、今年5月の全国消費者物価指数は、ウクライナ危機や急激な円安の影響で前年同月比2・1%増と2カ月連続で2%を上回った。現行の年金制度は今回のような急な物価上昇に対応できる柔軟性はなく、物の値段は上るのに年金支給額は減る悪循環が生じている。

 国は年金財政維持のためとして、支給額を一定抑制する「マクロ経済スライド」を導入。この仕組みにより、2046年度まで年金の給付水準は徐々に目減りする。厚生労働省は、国民年金の価値を現役世代の平均収入で見た場合、1人当たり18・2%(19年度)から13・3%(46年度)まで低下すると推計する。

 日本は今後、少子高齢化に伴い、42年に高齢者総数が3935万人のピークに達すると予測される。反対に保険料を負担する64歳以下の現役世代は22年の約7400万人から6千万人を割り込むと見込まれ、制度の根幹が揺らぐ。

 さらに、新型コロナウイルス禍も影を落とす。21年度の国民年金の加入者は前年度から18万人少ない1431万人。そのうち経済状況の悪化などで保険料の全額免除や猶予を受けた人は過去最多の612万人となり、加入者の4割超を占めた。20年度時点で京都では約15万4千人(前年度比約7500人増)、滋賀は約6万2千人(同約2700人増)に上る。

 年金の財政基盤が不安定さを増す中、将来を担う若者も危機感を抱く。

 「払った額に対してもらえる額の割合は今より減っている」。京都産業大4年の学生で、京都市北区の男性(21)と兵庫県宝塚市の男性(21)は口をそろえる。

 2人は大学で仲間と一緒に年金について研究。国民年金や厚生年金の受給額減少を補完するには、個人型確定拠出年金など自前で何らかの対策が必要との思いを強くした。

 参院選では、年金も主要な争点の一つだ。宝塚市の男性は定年後の不安を加速させた19年の「老後2千万円問題」に触れ「将来、どれぐらいの備えがあればよいのか国は明確に示すべき」と話す。京都市北区の男性は年金減額が賃金変動率と密接に関係している点を指摘。「支え手となる若者の賃金を上げ、将来の不安を取り除いてほしい」と願う。