大津地裁

大津地裁

 6月2日午後。少し幼げに見える小柄な女(22)が大津地裁の法廷に立った。初公判を前に親族が集まったのだろう、開廷前には廊下で抱き合って泣いていた。

 被告は、生きづらさを抱えた若者らが精神的な苦痛を和らげようと、処方薬や市販薬を大量に服用する「オーバードーズ」の愛好者だった。違法薬物より手に入りやすく、危険性の認識が薄いことから大きな社会問題となっている。SNS(交流サイト)には一緒に服用する仲間を探す書き込みが並ぶ。

 被告もSNSで男(39)と知り合った。検察側の冒頭陳述によると、被告は過去にそううつ病で睡眠導入剤の処方を受け、服用後の意識もうろう状態を楽しむようになり、男が大量の向精神薬を持っていたことから、岐阜県内から、男の自宅がある守山市までやって来た。

 そして、同様にSNSで友人になった京都市の女子高校生=当時(19)=を誘う。3人で薬を服用した翌朝、女子高校生は薬物中毒で死亡が確認された。

 被告人質問で弁護人から「友人が亡くなったことについてどう思っているか」と問われ、嗚咽(おえつ)を漏らした。「危険な場に呼んでしまったことを反省している。もう会えなくなってしまった。後悔している」

 検察官からの質問が続く。「オーバードーズが危険とは思わなかったのか」と問われると、「インターネット情報で、死にたくても死ねないと聞いていた」と甘い認識を口にした。

 裁判官は、心療内科に通わなくなったことについて質問した。被告が「通わなくても自力で治すことができるんじゃないかと家族と相談した」と話すと、「必要な時は受診するようにしないと」と戒めた。

 6月9日。執行猶予付きの判決が宣告された。裁判官に内容を理解できたか確認され、被告はか細い声で「はい」とうなずいた。執行猶予とはいえ、彼女は友人の死を背負って生きていかなければならない。適切な治療を忘れないでほしい。
      
≪女子高校生薬物中毒死事件≫

 昨年12月12日、滋賀県守山市の無職男(39)宅で、京都市伏見区の女子高校生=当時(19)=が倒れているのが見つかり、死亡が確認された。死因は薬物中毒。女子高校生と無職女(22)に向精神薬のエチゾラム100錠を譲り渡したとして男が起訴され、女も女子高校生に同50錠を譲り渡した麻薬取締法違反の罪で起訴された。

 女は公判で起訴内容を認め、大津地裁は6月9日、「友人(女子高校生)が向精神薬を過剰摂取することを認識しつつ犯行に及んだ」と非難し、懲役1年、執行猶予3年の判決を言い渡した。

 男は意識もうろう状態の女の下半身を触った準強制わいせつの罪でも起訴され、公判中。
     
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 さまざまな人生が交錯する空間が法廷だ。傍聴席から見える景色を報告する。