国の「かたち」は社会保障制度が決めるとも言われる。高齢化と少子化が同時進行し、人口が急減する日本で暮らしの「安全網」をどう維持するのか。

 参院選で与野党とも子育てや教育の支援策を前面に打ち出す一方、社会保障制度の軸となる医療や介護、年金については「充実」や「強化」の文言があるものの、あまり多くが語られていない。

 有権者の目をそらしたまま、選挙後にはサービスを減らし、保険料を増やす法改正を押し切るのが、最近の与党の常套(じょうとう)手段になっている。岸田文雄政権には率先して、社会保障の全体像と将来展望を明示することを求めたい。

 税や社会保険料などを合わせた社会保障費は年130兆円(2021年度予算ベース)に上る。国内総生産(GDP)の4分の1にあたり、政府は40年度に190兆円に達するとも推計している。

 空前の高齢化が主因である。直近では25年に約800万人に及ぶ「団塊の世代」がすべて後期高齢者(75歳以上)になり、高齢化率は3割を突破する。医療などの給付が膨らむ一方、負担する勤労世代は人口減で先細る。政府が負担増や給付減を繰り返すゆえんだ。

 ここ1年ほどでも利用者の増加に伴って介護保険料が上がり、現役世代の賃金が伸びないため公的年金が減額された。10月からは一定収入がある75歳以上の医療費窓口負担が1割から2割に倍増する。同月、雇用保険料も上がる。

 政府は3年前から、持続可能な「全世代型社会保障」の実現を打ち出す。有識者会議は5月、高齢者人口がピークを迎える40年を見据え、かかりつけ医の機能強化など論点の中間整理を示した。

 中でも、正社員が入る厚生年金や健康保険の対象拡大でパートやフリーランスなども給付対象とする「勤労者皆保険」の実現は、岸田氏が昨秋の衆院選公約に盛り込んだ肝いりだ。方向はいいとしても、企業負担などの具体的な制度設計は言及を避けたままである。社会保障全体の給付や負担の見通しにも踏み込んでいない。与党には説明責任があるはずだ。

 新型コロナウイルス禍で生活保護受給者が増える中、与野党公約とも現金給付など一時的な困窮対策が目につく。自立に向けた職業訓練や住宅福祉の強化など、きめ細かな目配りが欠かせない。

 社会保障への不安は、消費低迷など経済の足かせにもなる。限られた財源に優先順位をつけ、安心を再構築するのは政治の使命だ。