財政規律はもはやたがが外れたかのようだ。

 ウクライナ情勢や円安に伴う物価高、新型コロナウイルス禍を背景に、与野党が大胆な財政出動や減税の大盤振る舞いを競い合う。財政再建への道は遠のくばかりだ。

 国の借金である長期債務残高が3月末時点で、18年連続で過去最大を更新し、初めて1千兆円を超えた。高齢化に伴う社会保障費に加え、近年の景気対策、コロナ対策の巨額支出が急増に拍車をかけた形だ。危機的な状況は誰の目にも明らかである。

 税収の不足分は国債増発で補ってきた。借金頼みの綱渡りであるが、やりくりへの緊張感はうかがえない。「異次元緩和」により日銀の国債保有割合は5割を超え、まるで中央銀行が財政赤字を穴埋めしているかのようだ。規律を定めた財政法の精神に反すると言わざるを得ない。

 政府は基礎的財政収支を2025年度に黒字化する財政再建目標を掲げてきた。国際公約であり、先送りすれば日本の財政に対する信認は大きく揺らぎかねない。しかし、財務省の試算では5兆5千億円の赤字が見込まれ、実現は極めて困難とみられる。

 もちろんコロナ禍や物価高で困窮する人や事業者を支えるには緊急的な財政出動もやむを得まい。ただ施策と財源のバランスを取るのが政治の役割ではないか。

 ところが各党の選挙公約に財政再建の処方箋は見当たらない。

 自民党は「経済成長を実現し、財政の健全化を進め、将来の安心を築く」と記すが、基礎的財政収支の黒字化に言及しない。財政出動と経済成長を重視する党内の積極財政派の発言力が強いためだ。

 野党も「責任ある財政へ転換し、中長期的に財政を健全化」(立憲民主党)、「増税に頼らない成長重視の財政再建」(日本維新の会)などと訴えるが、総じて危機感は乏しい。一方で「積極財政に転換」(国民民主党)といった歳出拡大や減税の主張も目立つ。

 先進国最悪の債務は、経済や将来の大きなリスクにほかならない。このままでは次世代に重いつけを背負わせることになる。

 財政再建に近道はない。歳出を総点検し、削減策を探る必要がある。与野党共に票につながる「ばらまき」を訴えるだけでは無責任のそしりを免れまい。不都合な現実をも直視し、中長期的な財政健全化の道筋を有権者に語りかけてもらいたい。