香港が英国から中国に返還されて25年がたった。

 香港の「高度の自治」が50年間維持されるはずだった「一国二制度」が、中国・習近平指導部による徹底した民主派への弾圧などによって見る影なく変質した中、折り返しを迎えた。

 現地で記念式典に出席した習氏は同制度は「誰もが認める成功を収めた」と述べ、「愛国者による香港統治が実現した」と現状を正当化した。

 だが、憲法にあたる香港基本法が保障した言論の自由を弾圧し、自治を奪う強権統治に世界は厳しい目を向けている。一国二制度の有名無実化は許されない。

 一国二制度は、社会主義の中国に資本主義を併存させる制度で、香港は返還後、中国の「特別行政区」となった。

 2014年には香港トップである行政長官の選挙制度民主化を求め、市民らが「雨傘運動」を展開した。19年には逃亡犯条例改正に反対する大規模デモも行った。政治の不満に対し、抗議の意思を示す行動は当たり前だった。

 こうした動きを抑え込もうと、習指導部が主導し、香港国家安全維持法(国安法)が施行されて丸2年。民主化運動を支えてきた人たちが相次いで逮捕され、中国政府に批判的な新聞が廃刊に追い込まれるなど一変した。学校では中国への愛国教育が強化され、本土との一体化が加速する。

 選挙制度は民主派が排除される仕組みに変えられ、新行政長官には、親中派がほぼ独占する選挙委員によって警察出身の李家超氏が選任された。統制強化がさらに進むことが懸念される。

 返還記念日には民主派が例年実施してきたデモは見られず、住民は沈黙を強いられた。式典取材の許可を突然取り消されたメディアも複数あったという。

 香港に見切りをつけ、住民が英国や台湾などへ移住する動きもある。「国際金融センター」を支える企業や人材が流出すれば、中国にとってもマイナスのはずだ。

 米英や日本など先進7カ国(G7)は先月末の首脳声明の中で、香港の高度の自治を認める約束を果たすよう求めた。中国側は「内政干渉だ。権利や自由は十分に保障されている」と反論した。

 習氏は、今秋にも予定される中国共産党大会で異例の3期目入りを目指し、長期支配を確立しようとしている。自由や人権をないがしろにし、国際社会からの批判にも耳を傾けないのでは、大国として信頼は得られまい。