出版予定の著書の内容をもとに話す塩見さん(正面左)=6月16日、京都市中京区・京都新聞社

出版予定の著書の内容をもとに話す塩見さん(正面左)=6月16日、京都市中京区・京都新聞社

塩見さん(中央左端)の進行で、各自の「自分の研究所」を披露する参加者たち

塩見さん(中央左端)の進行で、各自の「自分の研究所」を披露する参加者たち

 「半農半X」の提唱者として知られる京都府綾部市出身の塩見直紀さん(57)が、これまでの歩みの中で生み出した88種類の発想方法を紹介し、「まちづくり」や「自分探し」に役立てる書籍を今年、京都新聞出版センターから発行する。執筆が最終段階となった6月、京都新聞ニュースカフェ・出版プレイベント「京都発の思考ツールを体験しよう」が京都新聞社(京都市中京区)で開かれ、市民45人が参加した。

 塩見さんは、持続可能な農のある暮らしと、「X」と言い表している天職や使命、好きなこと、ライフワークを組み合わせて社会に生かす「半農半X」を1990年代から提唱する。X探しを個々人の生き方や地域振興に応用して、問いを大切にする「AtoZ」や、各自のテーマを探究する「1人1研究所」といった多くの思考ツールを生み出し続けている。

 年内に出版予定の書籍には、米作りに必要とされる手間の数にちなんで88種類の思考ツールを載せる。京都のまちづくり事例と自身の歩みに絡めた6章立てで、イベントで塩見さんはその概要を話した。

 ロシアのウクライナ侵攻が続き、身近な地域では孤立、孤独が社会問題となる中、参加者の注目を集めたのは塩見さんの書籍原稿にある「自己紹介は地球を救う」という言葉だった。

 例えば戦争のさなか、戦う相手と向き合い自己紹介をして、愛する家族のこと、夢は何か、などを聞けば戦う意欲がなくなるかもしれない。地域での人々の関係性に当てはめ、「深い自己紹介がたくさん生まれる街。そんな世の中にしたい」と呼びかけた。

 ただ、人や環境といった地域資源の置かれている現状は、トランプの「神経衰弱」ゲームのようではないか、と指摘する。カードが裏向きで、符合する2枚を当てる楽しみはあるが、どこに何があるのか分からない。

 「逆に、全て表向きにして、誰もが見え、自由に組み合わせられるように」。そのための手法として、アルファベットの26文字を自己紹介や問いかけに使う「AtoZ」を示した。

 塩見さんが参加者に配った名刺は「(A)ayabe 京都府綾部市生まれ」「(B)book 『半農半Xという生き方』」…とAからZまで26の切り口で自身を表現している。また各自への問いかけの例として「(C)コレクションしているものは?」「(D)妥協しないことは?」「(R)『◯◯論』という本を書くなら?」といった言葉を紹介した。

 「人々の書く、表現する力を、もっと生かしたい。地球上の78億人一人一人のAtoZ本が、もしできれば。それは、誰一人取り残さない、というところに通じる」。何に関心を持って人生を歩んできたかを振り返る「自分史」作りや回想法、どんな人かを他人に伝えるパスポートのような役割を超高齢社会で果たせると指摘。SDGs(持続可能な開発目標)や、孤立がきっかけとなる疾患や医療の問題を地域のつながりによって解決するとして注目される「社会的処方」にも生かせる、とした。

 イベントの後半は参加者全員が、塩見さんの問いに答えるかたちで自己紹介した。

 お題は二つ。「大好きなことや気になるテーマを三つ、掛け合わせてください」「自分の研究所をつくるとしたら、どんなことをテーマにしますか?」

 参加者はじっくり考え、一言ずつ披露した。三つの関心事の掛け合わせでは、「エンタメ×心理学×ICT」「学校教育×まちづくり×上を向いて笑おう」「着物市場の行く末×幸せ×不易流行」「食×自然×笑い」「まち歩き×寄り道×面白いこと」など、さまざまな答えが出た。

 1人1研究所も、「笑顔と幸せ研究所」「身近なお気に入りのシェア研究所」「京都で感じる多国籍なもの、こと、暮らし研究所」「誰もがそこに行けばリラックスできる空間研究所」など多様だった。思わぬ組み合わせに驚きの声が上がり、関心の似た人同士が言葉を交わして交流した。塩見さんは「それぞれの研究所を育てていってほしいし、人と人の『X』同士の掛け算が広がればいい」と呼びかけた。

 しおみ・なおき 1965年、綾部市出身。半農半X研究所代表、総務省地域力創造アドバイザー。京都市立芸術大院修了。2021年まで福知山公立大特任准教授。著書に「半農半Xという生き方【決定版】」(ちくま文庫)、「半農半Xの種を播く」(コモンズ)など。

 ■先行予約はこちら 年内に発行予定の塩見さんの著書は、下のアドレスから先行予約できる。定価1760円(郵送料は別に180円)で完成直後の書籍を受け取れる。問い合わせは京都新聞出版センター075(241)6192。

https://kyoto-pd.co.jp/products/detail.php?product_id=3391