日米貿易協定の承認案が衆院を通過し、参院の審議が始まった。

 政府・与党は米国が求める来年1月の発効に間に合うよう承認を急ぐが、協定内容への疑問は積み残されたままで、議論は深まっていない。

 衆院外務委員会での審議はわずか11時間だ。環太平洋連携協定(TPP)の約130時間、米国を除いたTPP11の約50時間に比べてもあまりにも短い。しかも、うち1時間40分は野党の一部が質疑を拒否し、退席した状態だった。

 政府は「ウィンウィン(相互利益)」の協定というが、野党の要求する資料提出にも応じず、国民が納得できる根拠を示したとは言い難い。承認ありきの拙速な審議は慎むべきだ。

 大きな焦点となっているのは、継続協議となった日本車と関連部品の関税撤廃だ。

 自動車関連は米国向け輸出額の35%を占め、関税を撤廃できるかどうかは国益を大きく左右する。

 政府は協議を確実に進める考えを強調するが、協定文には、引き続き交渉を続ける、とのみ記述されているだけで、将来的に撤廃するという確約はない。

 ところが政府は、撤廃を前提に、協定が発効すれば国内総生産(GDP)を約0・8%(約4兆円)押し上げられるとの経済効果を示している。

 もし撤廃できなければどうなるか。野党は自動車と部品を除いた詳細な効果分析を求めているが、政府は拒み続けている。あからさまな国会軽視であり、これでは議論が深まりようがない。

 自動車の関税が撤廃されなければ、米国側の撤廃率は60%を下回る。2国間で貿易協定を結ぶ際に撤廃率を90%に引き上げるよう求めた世界貿易機関(WTO)のルールにも反することになる。

 米側がちらつかせていた自動車の追加関税については、首相はトランプ大統領から発動しないとの趣旨を直接確認したとする。

 だが具体的なやりとりは明らかにされておらず、口約束で終わる懸念が拭えない。

 肝心の部分が不明瞭なのに、衆院で採決に応じた野党の姿勢も問われよう。

 農産物については、米国産コメの無関税枠を設けなかったことなどを政府は成果に挙げるが、牛肉や乳製品など米国から輸入する約7800億円分の農産物の関税を撤廃、削減する。

 日本にとって協定は本当に「ウィンウィン」と言えるのか。議論を尽くしてもらいたい。