職場でのパワーハラスメントを防ぐ手だてになるのだろうか。

 来年6月施行の女性活躍・ハラスメント規制法に関し、パワハラの定義や防止策の具体的な内容を盛り込んだ指針がまとまった。

 侮辱や暴言といった「精神的な攻撃」、仲間外しや無視に代表される「人間関係からの切り離し」など6類型があると明示。相談体制整備などの対策を掲げた。

 職場での現場教育を重視し、指導とハラスメントの境界が分かりにくくされがちな日本の企業風土に一石を投じる意味はあろう。

 しかし、指針には不明確な記述も目立つ。パワハラの定義が限定的だとの指摘もある。

 都合よく解釈され、かえって企業の不適切な行為にお墨付きを与えることになる懸念も拭えない。

 策定を進めた厚生労働省の審議会では、パワハラに該当しない行為の表現について、経営側と労働側で議論が紛糾したという。

 厚労省は、「社会的ルールやマナーを欠いた言動を再三注意しても改善されない人に強く注意」するのはパワハラでないとしていたが、労働側はマナーの解釈が企業により異なる現状を念頭に懸念を表明、マナーの文言は消えた。

 パワハラの定義を明確にするための指針が、逆に問題の本質をあいまいにするのなら本末転倒だ。

 指針がハラスメントを「職場におけるもの」に限定し、保護の対象を原則的に企業の社員に限っている点も気になる。パワハラは飲み会など業務時間外で起きたり、社員以外の労働者が巻き込まれたりする可能性がある。

 特に内閣府推計で全国に300万人以上いるとみられるフリーランスでは、6割が取引先や上司からパワハラを受けた経験があるとする最近の調査結果もある。

 今回の指針が、働く人すべてを想定したものになっていないことを、政府や企業は十分認識しておかねばならない。

 国際労働機関(ILO)は今年6月、職場の労働者だけでなく求職者やボランティアなど幅広い人々へのハラスメントを全面禁止する条約を採択した。国内法でパワハラなどを禁じ、違反には制裁を設けることを求めている。

 日本政府も賛成したが、批准するには罰則規定のないハラスメント規制法の大幅な改正が必要となろう。だが、政府は「批准は別の議論」と後ろ向きな姿勢だ。

 日本の取り組みは国際基準から立ち遅れている。法律も指針も絶えざる見直しが求められる。