参加者が花を掲げ、「同意のない性行為」の処罰法創設を訴える「フラワーデモ」が広がっている。

 作家の北原みのりさんらが最初に呼びかけ、今年3月から毎月11日に行われている。

 今月も9都市で開催された。大阪市の会場には130人以上が集まり、参加した女性の一人は「孤立して苦しんでいる性被害者が声を上げられるよう、支えたい」と話した。

 デモのきっかけは、今年、性暴力事件の裁判で無罪判決が相次いだことだ。

 いずれも裁判所は性被害の実態を認定したのに加害者を無罪とした。

 名古屋地裁岡崎支部は今年3月、19歳の娘と性交し、準強制性交罪に問われた父親を無罪にした。

 同意がないと認定する一方、「抵抗ができないわけではなかった」として犯罪の成立を認めなかった。

 同じ月、静岡地裁浜松支部は、被害者が抵抗しなかったため任意の性交だったとした。暴行が抵抗を困難にするものだったと認定したが、「被告からみて明らかにそれと分かる形での抵抗はなかった」と結論づけた。

 同様の判決が、福岡地裁久留米支部と静岡地裁でもあった。

 強い違和感を覚える判断だ。なぜこうなってしまうのか。

 性犯罪については、2017年の刑法改正で「強姦(ごうかん)罪」が「強制性交罪」になり、刑罰も厳しく改められた。性暴力の被害者や支援者らが厳罰化を強く求めた成果だ。

 その際、「被害者が抵抗できない状態(抗拒不能)」や「暴行、脅迫」が犯罪成立要件とされた。

 一連の判決はこの要件を厳密に適用した結果とみられる。一方で、性暴力被害の当事者や支援者からは「性暴力の実態を見ていない形式的な判決」といった厳しい批判が上がっている。

 性暴力には、暴力で恐怖感を与えるだけでなく、密閉された空間で長期間にわたって精神的に支配したうえでの手口も少なくない。

 被害者らでつくる団体「Spring」の山本潤さんらは「暴行や脅迫がなくても抵抗できない状態になり、性犯罪が成立することは、心理学的、精神医学的にも証明されている」と訴える。

 家族や近親者による性暴力の被害者には、「訴えれば家族が壊れて生活できなくなる」「きょうだいが生活に困る」などと思い込まされる人が少なくないという。

 Springや被害者らは「抗拒不能」などの要件削除や、同意のない性行為を処罰する法整備を訴えている。

 同意・不同意の立証は簡単でないことも多く、冤罪(えんざい)を生む恐れもある。慎重な制度設計が必要だ。

 裁判官を含めた司法全体が性暴力の現実をもっと学び、抗拒不能の実態に即して捉えるべき、との指摘がある。もっともな提案だ。

 性暴力は「魂の殺人」といわれる。法律の機械的な適用では魂は救われまい。改善に向け議論を加速させたい。