この秋、財布を軽くした人もおられよう。消費増税に伴う、キャッシュレス決済でのポイント還元のことだ。現金よりもカード、スマホを持つ習慣は根付くか▼5年後には新紙幣が登場する。デザインを一新し、偽造を防ぐため肖像の3次元画像が回転する最新のホログラムを備える。外国人も使いやすいように額面の洋数字も大きくした▼お金を取り巻く状況が一変すると、この女性の影は薄くなるのだろうか。現在の5千円札の肖像・樋口一葉である▼お札の顔だが、一葉はお金に苦労した。兄や父に先立たれ、10代で作家になることを決意する。24歳で早世するまで、名作「たけくらべ」「にごりえ」などで明治女性の厳しい現実と悲哀を描いた。きょうは命日の一葉忌▼彼女はお金にまつわる言葉も残す。筆一本では家族の生活を支えきれず、知人に借金を申し込むが期待は裏切られる。それでも卑屈にならず、開き直って言う。<我れに罪なければ天地恐ろしからず>。その澄んだ心境を思う▼一葉の言葉を裏返せば、後ろめたいことがあれば批判を恐れることだろう。急きょ来年の中止が決まった首相主催の「桜を見る会」。5千万円超のお金が使われ、招待者の選定を巡る首相答弁も揺れる。何かやましいことでも? お札の一葉がじっと見ている。