自民、公明両党が、それぞれ税制調査会(税調)の総会を開き、来年度の税制改正に向けた議論が始まった。

 両党は、来月12日にも与党税制改正大綱を策定する。時流に対応するとともに、税制面で公正かつ公平な社会を築くようなものにしてもらいたい。

 自民税調の会長には、経済再生担当相などを務めた甘利明氏が、9月に就任した。税調幹部に多い財務省の出身者とは、異なる観点から改正を進めそうだ。

 企業の内部留保が増え続けていることを問題視し、留保された資金が、投資に振り向けられるよう誘導したいと考えている。

 財務省の発表した法人企業統計によると、企業の内部留保に当たる利益剰余金は昨年度、7年連続で過去最高を更新して、460兆円を超えた。

 これを一部でも投資に回せば、日本経済の成長を促すだろう。税制を用いて誘導するのは、方向としては間違っていない。

 税調で検討されるのは、企業の合併・買収(M&A)を促す減税措置だという。

 革新的な技術を持つベンチャー企業などを買収する際に、出資額の一部を法人税から差し引くことなどを想定している。

 高度なデジタル化への対応を急いでいることもあって、第5世代(5G)移動通信システムの構築に、投資が増えるような取り組みについても議論するようだ。

 通信網の整備を前倒しで行う企業の法人税や固定資産税を、軽くするとみられる。

 こうした具体的な検討項目を眺めると、大企業への優遇策ばかりが目立つ。

 投資の促進以外にも、電気やガスの事業者に適用している一般より重い課税制度の見直しや、企業版ふるさと納税制度の優遇幅の拡大などが、改正のテーマに挙がっている。

 この30年で、20兆円近くあった法人税収は、度重なる減税によって、12兆円余りにまで減少した。一方で、消費税が導入され、今年10月には税率が10%に引き上げられた。企業へのさらなる減税措置だけでは、国民の理解を得られないだろう。

 減税の穴埋めをどうするのか、明らかにしてほしい。大企業や富裕層の税逃れを防止する方策も、考えておくべきだ。

 中小企業の事業承継や未婚のひとり親への支援などにも、細やかな配慮を求めたい。