安倍晋三首相主催の「桜を見る会」を巡る先日の国会質疑で、内閣府が野党から今年の招待者名簿の資料要求があった日に、名簿をシュレッダーで廃棄したと答弁した。

 内閣府は「シュレッダーの利用が重なり、なかなか使えなかった」と、資料要求と廃棄の日が重なったのは偶然だと強調した。かなり苦しい言い訳に聞こえる。

 安倍政権は招待者名簿の「廃棄済み」を理由に、桜を見る会に関する野党側の追及をかわし続けている。官僚が政権に「忖度(そんたく)」し、やましいリストを隠したと受け取られても仕方ないのではないか。

 公文書管理法は、行政機関の職員が職務上作成・取得し、組織的に用いるものとして保有している文書を、管理の対象となる「行政文書」と規定。桜を見る会の招待者名簿も行政文書であり、同法の対象になる。

 内閣府の国会での説明によると、名簿は招待者リストを発送するためのもので、会の終了で必要性がなくなったため、「遅滞なく廃棄」したという。

 公文書は、国などの活動や歴史的事実を伝える重要な記録であると同時に、政府の施策が妥当か否かを事後検証する上で欠かせない資料であるはずだ。

 にもかかわらず、内閣府はなぜ招待者名簿を急いで廃棄したのか。国会や国民への説明責任を果たす上で大事な証拠となる文書を隠蔽(いんぺい)したのと同じではないか。

 内閣府は名簿を「数千人の個人情報が含まれる。適切な管理は困難」として保存期間1年未満としていたが、総務省や国土交通省などは同様の名簿を保存期間10年未満として扱っている。なぜ1年未満なのか。内閣府は明確な根拠を示せていない。

 安倍政権下ではこれまでにも、疑惑解明が求められる局面でずさんな公文書管理が次々と明らかになってきた。

 森友学園への国有地売却が問題となっていた2017年2月、首相が国会で「私や妻が関与していれば首相も国会議員も辞める」と発言。その後に財務省が公文書である決裁文書の破棄・改ざんを始めていた。

 18年4月には、防衛省が「存在しない」としていた陸上自衛隊イラク派遣部隊に関する日報が見つかり、後に情報を隠蔽(ぺい)していたことも判明した。

 森友と日報の問題を受け、政府は内閣府に公文書監察室を設置し、独立公文書管理監の権限を拡大させて各府省庁を常時監視する体制を強化している。

 だが、今回の名簿の廃棄は、その内閣府で行われた。

 体制強化しても、公文書管理の実効性確保につながっていないのではないか。「身内」である官僚の監視ではなく、公文書保存に詳しい専門家による点検が必要だ。

 公文書の保存期間についても、各府省庁が独自の判断で廃棄できるような仕組みを改めなければならない。明確で統一的な基準を設けるべきだ。

 行政府を監視する立場の国会は、今回の名簿廃棄をうやむやで終わらせてはならない。徹底した調査と検証が求められる。