防犯機能付き固定電話の導入を薦める電器店の男性(京都府京田辺市草内)

防犯機能付き固定電話の導入を薦める電器店の男性(京都府京田辺市草内)

 自治体職員や銀行員を装って、言葉巧みに被害者から現金を詐取する特殊詐欺。犯行グループが被害者に接触する際、自宅の固定電話に連絡するケースが8割にも上ることに着目した京都府警田辺署と八幡署は、このほど防犯機能付き固定電話の新規購入者への補助事業を始めた。相手に警告メッセージを流し、会話を自動録音する電話で、特殊詐欺の被害ゼロを目指す。

 「元号が変わったため、現在使用しているキャッシュカードは使えなくなりました」。府内に住む高齢者が自宅の電話を取ると、銀行員を名乗る男からそう告げられた。「近くに担当者がいるのですぐ行かせます。電話を切らずに待っていてください」という言葉通り、間もなくスーツの男が家のチャイムを押す。「新しいカードを送るので、現在使用しているカードは保管させてもらいます」と封筒を渡され、封印するため印鑑を持ってくるよう言われる。

 数日後、新しいカードが届かないことを不審に思った高齢者が銀行に確認すると、そのような訪問記録はないことが明らかになった。封筒を開けてみると、印鑑を探している間にキャッシュカードはすり替えられており、現金は既に引き出されていた。

 田辺署の岩田宇司生活安全課長は、実際にあった特殊詐欺の例を挙げ「電話を取った瞬間からどんどん状況を変化させ、家族や警察に相談させる隙を与えない」と特徴を説明する。2018年に府内で発生した特殊詐欺は257件、被害総額は約5億7600万円にも上る。中でも犯行グループから自宅に電話がかかってきたのは207件。「電話に出なければ被害を防げた可能性が高い」として、登録していない番号からの電話を拒否したり、呼び出し音が鳴る前に相手に警告メッセージを発する機能を備えた電話設置が効果的だと語る。

 補助事業は地域の防犯協会、府電機商業組合とタッグを組んで行う。両署管内の同組合加盟店で電話機を購入すると、防犯協会から1台当たり2千円を助成。田辺署は100台、八幡署は50台に達するまで補助を続ける。

 京田辺市草内で電器店を営む男性(72)は、積極的に事業を周知している。事業をきっかけに電話機の買い替えを決意する客は多く、開始から2週間で16台が売れた。「夕方にいつもかかってきていた不審な電話がなくなった」との評判も聞く。「電話帳のデータ登録をするなど手間はかかるけど、警察とも協力してなんとかお客さんの被害を減らせたらいい」と話した。