介護施設で会うおばあちゃんは昼間は陽気なのに毎晩「早くお迎えが来るように。生きているのが申し訳ない」と祈っていた▼夜勤中にその姿を見た女子学生はがく然とする。「そう思わせていたのは私だ」。お世話しようと思うばかりで、その人が持つ力や個性を見ていなかったと気付いた▼大学時代にデイサービスのアルバイトを経験した秋本可愛さん(29)の話だ。時間や人手が足りず、介護される側もする側も不幸になる現実。滋賀県の施設関係者に向けた講演でこう指摘した。「専門家が決める限界が、利用者の限界になるのでは」▼卒業後「私が変えてやるという勢い」で起業し、介護に携わる若者をつなぐ環境づくりと人材確保の相談に取り組む。念頭にあるのは2025年に全国で介護職が38万人不足するという状況。各地の優れた実践を共有し、疲弊する現場を改める一助にと奔走する▼志を持ち介護職を選んだのに、壁に直面し離職する若者が相次ぐ。県老人施設協議会は「福祉系大学で学んでも別業種へ進む人も多い。魅力をどう伝え、やる気を保つかが課題」という▼「仕事で感じた違和感を愚痴や不満にせず、提案や行動に変えよう」。マイナスに映るものをプラスに。秋本さんの言葉は、閉塞(へいそく)感漂う日本社会へのエールにも聞こえる。