韓国の文在寅(ムンジェイン)政権が、日本政府に破棄を通告していた軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を当面維持することを、期限満了となる直前で決めた。

 日韓は貿易管理に関する協議を始めることでも合意した。

 GSOMIA失効が回避されることで、北朝鮮の核・ミサイル開発に対応する日米韓3カ国の安全保障協力に亀裂が生じる事態はひとまず遠ざかった。

 輸出規制問題を巡る協議の開始は、新たな対話のチャンネルになり得る。厳しい対立が続いている日韓関係が変化する可能性が出てきたといえる。

 これを関係修復の好機ととらえ、互いの距離を縮める方向へ踏み出すことはできないか。

 関係悪化の根本にある元徴用工訴訟問題では今のところ、日韓に歩み寄りはない。

 しかし、北東アジアで重きをなす両国の対立が経済や安全保障の分野にまで拡大している現状は、北朝鮮や中国、ロシアなど周辺国のさまざまな思惑を刺激するだけだろう。

 冷静な対応が必要だ。日韓双方に柔軟な知恵を求めたい。

 韓国がGSOMIAの維持を判断した背景には、米国の強い圧力があった。米政府は高官を相次いで派遣し、米軍駐留費増額要求も行って維持を求めた。米上院も協定の重要性を再確認する決議を可決した。

 日本側が貿易管理の協議開始で合意したことも、韓国にとっては日本が軟化したとアピールできる材料を得たといえよう。

 日本政府は協定の失効回避とは無関係だとしているが、問題解決に向けた局長級の対話を行うという。追い込まれていた文政権としては、振り上げていた拳をぎりぎりのタイミングで下ろしたようにみえる。

 ただ、韓国側はGSOMIAを「いつでも終了させられる」と、今後も交渉カードにする姿勢を崩していない。文氏の支持層は協定破棄に賛成する割合が多く、来年4月に総選挙を控える。世論の動向によっては、今回の協定維持の判断が両国の関係修復につながっていくかどうか見通せない部分もある。

 日韓外相は、安倍晋三首相と文氏の首脳会談を12月下旬に行えるよう調整することで一致した。ただ、元徴用工訴訟問題で双方の主張は隔たったままだ。

 今月上旬、韓国の国会議長が日韓の企業と個人から寄付金を募り、元徴用工らに賠償の代わりに支給する法案の概要を明かした。しかし、賠償問題は日韓請求権協定で「解決済み」とする日本政府は受け入れ困難との認識だ。韓国の市民団体などからも、金銭だけで加害責任を免じる内容だと批判が出ている。

 解決への糸口を見つけるのは簡単ではないが、打開策を早急に探る必要がある。仮に韓国最高裁から賠償を命じられた日本企業の資産が売却されれば、状況はより深刻化しよう。そうした事態は避けねばならない。

 GSOMIA維持で兆した日韓の対話局面を逆戻りさせてはなるまい。双方とも相互協力の重要性を見据え、着実に対話を重ねていくことが必要だ。