平日の午前中であるにも関わらず、観光客で混雑するバルセロナ市の目抜き通り「ランブラス通り」(5月22日)

平日の午前中であるにも関わらず、観光客で混雑するバルセロナ市の目抜き通り「ランブラス通り」(5月22日)

 まちの許容量を超える観光客が訪れ、住民生活に影響を与える「観光公害」。世界では「オーバーツーリズム」と呼ばれ、バルセロナをはじめ、オランダの首都アムステルダム、「水の都」で知られるイタリアのベネチアなど各都市が直面している。国連は2017年を「持続可能な観光の国際年」と定め、地球規模で対策の必要性を唱えた。

■「旅行の民主化」世界の旅行者は年間12億人

 国連は「国境を越えて観光する人は世界で1日300万人以上、毎年12億人」とみる。雇用創出や異文化理解といった果実をもたらす一方で、文化遺産や自然環境の破壊、不平等な労働環境といった課題を生んでいると指摘する。

 観光拡大の背景について、ジェイダ大オステリア校(バルセロナ)のクラウディオ・ミラノ教授(34)は「観光資源だけではなく街自体を楽しむ『アーバンツーリズム』が流行する中で、格安航空会社が登場し、民泊のインターネットでの仲介が利用者を伸ばしたことが要因だ」と解説する。アジアやアフリカなどの中間所得層が海外に出かける「旅行の民主化」も大きいと言う。

 ベネチアは年間1千万人余りの宿泊客が訪れ、クルーズ船寄港も増えた。国土交通省の報告書によると、外国資本の流入で住宅価格が高騰し、住民流出が相次ぐ。路地や水上交通が混雑し、店舗も観光地化するなど、「住民の利便性や歴史的な雰囲気が損なわれている」という。年内には観光客に対する「訪問税」を導入し、美化や警備の財源にする動きも出ている。

 アムステルダムでは民泊営業日数を年間30日に制限し、旧市街地では観光客向けの出店規制も始めたが、「観光客向け」の定義が難しく反発も強いという。

 バルセロナの変遷を見つめてきたツーリズム研究組織のエルネスト・カニャーダ代表(50)は「1992年の五輪以前はホテルも閑古鳥だった。開催後は急速に観光地化が進み、工業用の空き地への不動産投機が始まった。観光客は短期滞在なのでお金を盛んに使い、日常用品や住居の価格が上昇した」と分析し、観光と市民生活の関係について、こう指摘する。「私たち市民が嫌で否定しているのは、観光や観光客ではない。観光による負の影響なのだ」