選挙を前に、体裁を取り繕ったと言うしかない。

 参院定数6増に伴う経費を削減するためだとして、参院議員の歳費を自主返納できるようにする改正法がきのう、与党と国民民主党などの賛成多数で成立した。

 返納額は1人当たり月7万7千円が目安だと付則に明記された。

 参院は3年ごとに半数が改選されるため、今夏の参院選は3増となる。その分の歳費や秘書経費など年間約2億2500万円を返納で相殺するとの計算だ。

 定数6増は、1票の格差を是正するため2016年の参院選前に行った「鳥取・島根」「徳島・高知」の合区で出た不満に対応するため、自民党が打ち出した。

 そのための経費の増加を国民負担に求めるのでなく、議員が「身を切る」ことで解消し、批判をかわそうとの狙いなのだろう。

 もっともらしく見える部分もあるが、疑問点も多い。

 6増のうち4増分は比例代表を増員し、そこに「特定枠」として拘束名簿式を一部復活させる。合区で立候補が困難になった現職などを救済する意味合いが濃い。

 有権者にとっては、非拘束名簿式の比例代表に拘束名簿式の枠が部分的に加わるため、分かりにくさが増すことになる。

 合区される前の選挙区から立つ予定だった候補者が比例代表の特定枠で当選すれば、その選挙区の代表が実質的に増えることにもなる。合区にした根拠が形骸化することにならないだろうか。

 自民に都合の良い制度改正といえる。そのための経費負担を全議員で担うのは筋が通らない。

 定数増は恒久的措置なのに、返納が3年間に限定されていることも理解しにくい。中途半端な仕組みで、国民の納得は得られまい。

 定数や選挙制度の改正には、二院制のもとでの参院の役割について突っ込んだ議論が不可欠だ。

 だが実際には与野党の議論がかみ合わないまま、選挙直前にその場しのぎの修正が繰り返されてきた。抜本改革に向けた意欲が与野党ともに欠けている。

 国会議員の経費には、月100万円の文書通信交通滞在費などもあり、議員1人当たり経費は年7千万円を超える。こうした経費全般の妥当性について、衆院も併せて見直しを進めることが必要だ。

 自主返納は議員個人に委ねられており、ルールではない。形ばかりの「身を切る」姿勢を示すことが、かえって抜本改革を遠のかせることにならないか気になる。