信仰と動乱に彩られた歴史

 京、大坂から高野山に向かう多くの道が1本に合流する大阪南部・河内長野市。観心寺と金剛寺という名刹(めいさつ)が栄え、南北朝時代は行宮(あんぐう)(仮御所)が置かれ楠木正成ら南朝方の拠点となった。京都国立博物館の特別展「河内長野の霊地 観心寺と金剛寺―真言密教と南朝の遺産」は、両寺に残る仏像や仏具の名品と新発見の文化財計130件を通じて信仰と動乱に彩られた歴史の息吹に触れられる。

重文 伝宝生如来坐像(弥勒菩薩) 平安時代(9世紀) 大阪・観心寺蔵 画像提供:公益財団法人美術院 撮影:金井杜道

 高野山の参詣道となった「高野街道」のある河内長野地域は、歴史的に京の貴族や有力者と縁が深い。役小角の開創と伝わる観心寺、行基の創始、阿観の再興とされる金剛寺は、いずれも平安・鎌倉期に中央権力とのつながりで発展した。

板絵種子五社明神図 室町時代 天文23(1554)年 大阪・観心寺蔵
厨子入愛染明王坐像 鎌倉~南北朝時代(13~14世紀) 大阪・天野山金剛寺蔵

 見どころは、こうした都の文化を反映した高度な仏教美術だ。観心寺は、平安初期の古像「伝宝生如来坐像(弥勒菩薩)」(重文)、寺を守護した神社の御正体(ご神体)「板絵種子五社明神図」、新発見の「厨子(ずし)入愛染明王坐像」などを出陳。彩色豊かな彫刻として名高い本尊秘仏「如意輪観音坐像」(国宝)は今回、昭和期の模刻を展示する。

国宝 剣 附黒漆宝剣拵 剣:平安時代(10世紀) 拵:鎌倉時代(13世紀) 大阪・天野山金剛寺蔵
国宝 日月四季山水図屏風(右隻) 室町時代(15~16世紀) 大阪・天野山金剛寺蔵

 一方、金剛寺は本尊の大日如来坐像(重文)や、阿観の所用と伝わる平安期の剣(国宝)を出陳。伝法の儀式で使われたとされる「日月四季山水図屏風(びょうぶ)」(同)は、太陽と月と山を象徴的に描いた大和絵の傑作だ。今回の博物館の調査で欠失部分が発見され、ほぼ完全復元された中国・唐代の小説の最古写本「遊仙窟(ゆうせんくつ)」(重文)も紹介する。

重文 藍韋威腹巻 室町時代(15~16世紀) 大阪・天野山金剛寺蔵

 楠木一族の着用や奉納と伝わる中世の甲冑(かっちゅう)は、重文指定22件が勢ぞろいする。京都奪還に失敗した南朝の後村上天皇の念持仏とされる仏像や琵琶、貴重な古文書は、激動の時代を物語る。

重文 大随求菩薩像 鎌倉時代(13世紀) 大阪・観心寺蔵
重文 観音菩薩立像 飛鳥時代後期(7世紀) 大阪・観心寺蔵


【会期】7月30日(土)~9月11日(日) 前期は8月21日まで、後期は23日から 月曜休館 
【開館時間】午前9時~午後5時半、金・土は午後8時まで(入館は閉館30分前まで)
【会場】京都国立博物館平成知新館(京都市東山区茶屋町)
【入館料】一般1200円、大学生600円、高校生300円。中学生以下、障害者手帳提示の人と介護者1人は無料
【主催】京都国立博物館
【共催】京都新聞
【記念講演会】7月30日「観心寺・金剛寺と南北朝動乱」=尾谷雅彦氏(元河内長野市教育委員会)▽8月20日「観心寺・金剛寺の歴史と文化財調査」=井並林太郎氏(京都国立博物館研究員)▽27日「観心寺・金剛寺の金属工芸」=末兼俊彦氏(同館主任研究員)▽9月3日「観心寺・金剛寺の聖教」=上杉智英氏(同館研究員)▽10日「真言密教のみほとけたち-観心寺・金剛寺を中心に」=淺湫毅氏(同館上席研究員) ※いずれも同館平成知新館講堂で、午後1時半から。定員100人。聴講無料(ただし当日観覧券が必要)。各日午前10時から整理券を配布。
【問い合わせ】京都国立博物館075(525)2473(テレホンサービス)