高齢ドライバーによる事故多発を受け、政府は運転支援機能付きの安全運転サポート車のみ運転できる限定免許制度の創設などを盛り込んだ緊急対策を打ち出した。

 東京・池袋での母子らの死傷事故などが相次ぎ、交通安全対策の関係閣僚会議で決めた。アクセルとブレーキの踏み間違いを防ぐ装置の性能認定制度の導入なども急ぐ。

 交通死亡事故は減っているが、小さい子どもも巻き込む痛ましい事故が後を絶たない。とりわけハンドルやアクセル、ブレーキ操作を誤るケースが目立つ。これ以上悲劇を繰り返してはならず、対策の実施は一刻の猶予もない。

 限定免許について警察庁は、2017年から有識者会議で海外の事例を参考に議論してきた。75歳以上を対象に運転できる車種や、地域や時間帯を検討したが、事故抑制効果などで意見が分かれ、結論に至らないのは残念だ。本年度中に結論を出すというが、導入へ一歩踏み出すべきだろう。

 改正道交法で認知機能検査が採用されたものの、認知症だけが事故原因ではない。誰しも加齢に伴い身体機能が低下し、判断力は衰え、操作ミスを招きかねない。

 事故抑止に最も効果が期待されるのは運転免許の返納だが、公共交通機関が少ない地方では「生活の足」として車が欠かせない。

 限定免許ならば近所での買い物や通院程度の運転はできる。運転支援の安全技術は万全ではないとはいえ危険性は軽減され、事情があって免許返納に踏み切れない高齢者にとって選択肢となり得る。

 サポート車限定だけでなく、技能に応じて地域や時間帯を絞った運転免許も幅広く検討したい。一方でドライバーに認められた権利に制限を加えることにもなり、国民の理解を深める必要がある。

 今後もさらに高齢の運転免許保有者は増加する。運転免許の自主返納は少しずつ浸透してきたが、昨年1年間に返納したのは約42万人。75歳以上の免許保有者の約5%と低い水準にとどまる。

 高齢社会白書によると、80歳以上でも4人に1人が自分で運転する車で出掛け、うち6割近くがほぼ毎日運転している。都市の規模が小さいほど、その割合が高く、高齢者の暮らしに車は欠かせない。

 だからこそ国や自治体は併せて高齢者が車を手放しても困らない環境整備を急いでほしい。地域を巡るコミュニティーバスなどで移動手段を確保するほか、電動カートといった低速で安心して利用できる乗り物の普及も一助となる。