香港政府や中国指導部への怒りが圧勝を呼び込んだといえよう。

 香港の区議会(直接投票枠452議席)選で、民主派が議席の8割超を制した。投票率も1997年の中国への返還後最高の71・2%で、前回を20ポイント以上上回った。

 選挙前に7割の議席があった親中派は惨敗し、勢力は逆転した。

 抗議デモに強権的な態度で臨んできた香港政府と、高度な自治を保障するはずの「一国二制度」を骨抜きにしようとしてきた中国に対する拒絶感の表れといえる。

 ただ、民意が示されても、香港政府や習近平指導部の対応が和らぐ保証はない。逆に態度をいっそう硬化させる可能性もある。

 香港ではすでに半年近くも激しいデモが続いており、これを抑えようとする警官隊との間で攻防がエスカレートしている。

 取り締まりの強化が抗議をさらに過激化させる悪循環に陥っている。双方はいちど矛を収め、対話を模索する時ではないか。

 習指導部はデモが本土に拡大することを警戒し、断固として抑え込むよう香港政府に指示した。

 今月11日には大学生が発砲されて一時重体になった。武器使用をためらわない雰囲気が警察当局に広がっているようだ。

 一方のデモ隊は「復讐(ふくしゅう)せよ」と連呼しているという。従来の「香港人頑張れ」といった言い方から変化しており、市民の当局に対する憎悪感がうかがえる。

 混乱を解消する責任は、香港政府にある。だが、林鄭月娥行政長官は立法会(議会)の手続きをとらずに「覆面禁止法」を制定するなど強硬な姿勢を崩していない。

 デモ隊が求めた「五大要求」のうち逃亡犯条例改正案の撤回はしたが、警察の暴力を追及する調査委員会設置には応じていない。

 突っぱねるだけでは事態収拾にはつながらない。混乱が長期化すれば犠牲者もさらに増加しよう。柔軟な姿勢への転換が必要だ。

 懸念されるのは、習指導部が林鄭氏を見限り、直接介入してくることだ。そうなれば、中国と香港だけの問題では済まなくなる。

 衝突の背景には、自由や民主主義、法治などの理念が損なわれることへ強い危機感をもつ市民と、中国の統治システムに優越性があると主張する習指導部との「価値観の相違」がある。それだけに折り合うのは簡単ではない。

 明確に示された民意を力ずくで抑え込もうとすれば、内外から厳しい目を向けられよう。中国や香港政府は、そこを認識すべきだ