中国トップとして14年ぶりに習近平国家主席が北朝鮮を訪問し、金正恩朝鮮労働党委員長と会談した。北朝鮮側の熱烈歓迎が極立ったが、両首脳の頭にあるのは米国であり、それぞれの打算が働いているようにも見えた。

 朝鮮半島の非核化への見通しがつかない中で、「非核化」が米国との交渉カードに使われているのなら残念と言わざるを得ない。

 歓迎ムード演出の中で、朝鮮戦争以来の「血縁の絆」という言葉が聞かれたが、実際の両国関係は長らく冷え込んでいた。

 習氏は2013年の主席就任から、一度も北朝鮮の土を踏んでいなかった。中国国境近くで核実験を繰り返す北朝鮮に激怒し、国連安全保障理事会の北朝鮮制裁決議で、中国は賛成に回っている。

 一方、北朝鮮の権力世襲に批判的な中国に、金氏は警戒心を持っているといわれる。核・ミサイル開発を進める背景には、中国への不信感もあろう。

 それでも中朝が接近するのは、それぞれが米国との関係で難しい局面にあるからだ。北朝鮮にとっては経済制裁、中国にとっては貿易摩擦だ。

 会談で金氏は、核実験中止などの措置を取ったのに制裁が続いていることを念頭に「関係国の積極的な反応がない」と不満を述べている。制裁解除に向けた中国の協力を期待してのことだろう。

 一方、習氏は非核化に向けた北朝鮮の努力を評価し、米朝協議の継続を「国際社会が期待している」と対話を促した。金氏は「忍耐心を維持したい」と述べており、米朝協議を当面続ける意思を示したと言えよう。

 ただ、今年2月のベトナムでのトランプ米大統領との首脳会談が不調に終わった後、北朝鮮は短距離ミサイルを発射している。危険な挑発はやめるべきだ。

 28日からの20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)で、習氏はトランプ氏と会談する予定だ。金氏との会談の成果をどう示すのか。米中貿易摩擦が最大の懸案だが、朝鮮半島の非核化へ米中が果たす役割を忘れないでもらいたい。

 北朝鮮はロシアにも接近し、4月には金氏とプーチン大統領が会談している。中ロはともに米国との関係が厳しさを増している。小さな冷戦構図が、朝鮮半島を中心に生まれないか懸念する。

 日米韓は連携しつつ、非核化に向けて、あくまで対話の姿勢を貫くべきだ。G20で日本が果たすべき役割もあろう。