今年も大雨のシーズンを迎えている。

 甚大な被害が出た昨年7月の西日本豪雨では、農村風景の一部になっているため池の決壊が各地で相次ぎ、身近な存在の危険性が浮かび上がった。

 直後の緊急点検をもとに農林水産省が新たな基準を設け、自然災害で人的被害が生じる恐れのある「防災重点ため池」を再選定した結果、今年5月末時点で約6万3千カ所が対象となった。従来の6倍近くに増え、農業用ため池の4割弱に上った。

 ため池の決壊は過去も豪雨や地震で起き、多くの犠牲が出ているが、地元任せで行政の対策が後手に回ってきたのは否めない。老朽化に加え、利水する農家の減少などで管理が行き届かず、危険性を増す状況にある。

 国は、自治体による管理を強化する新法を7月に施行する。人命に関わる堤防の補強や監視、避難の対策を急ぐとともに、周辺住民も身近なリスクを認識して備えたい。

 西日本豪雨では、広島や岡山、京都など計32カ所のため池が決壊した。このうち防災重点に認定されていたのは3カ所だけで、広島県福山市で家ごと流されて3歳女児が犠牲となった決壊現場も未認定だった。

 このため農水省は、人的被害が起きうるため池を漏れなく防災重点とする方針に変更。ため池から100メートル未満の浸水地域に家屋や公共の施設があるなどの基準を明確化した。

 再選定されたのは、兵庫の9135カ所、広島の8167カ所が多く、京都はため池数の4割の625カ所、滋賀は3割の450カ所。防災重点は国の補助を受けやすくなるが、数が多く、さまざまなため池の対策を進めるのは容易でない。

 ため池は、農業用水を得るため江戸時代以前に築かれたものが約7割を占める。農家の高齢化や減少で維持管理に手が回らず、老朽化が進んでいる。昨夏の滋賀県の緊急点検では、草木に覆われて近づけないため池もあったという。

 新法では、防災上重要なため池を都道府県が指定し、工事の命令や代執行ができるほか、所有者が不明な場合に市町村が管理権を取得できる制度も設けた。対策の加速につなげたい。

 ハード面に加え、被害を抑えるには浸水予測や避難場所を記すハザードマップ(危険予測地図)の作成、周知も重要だ。

 防災重点ため池には必要とされているが、農水省のまとめで西日本豪雨以前の一昨年3月末時点で公表されていたのは全国で約35%にとどまっていた。

 数の多い西日本で遅れており、自治体の作業態勢を抜本的に拡充する必要がある。避難計画作りなどで住民の参加と知恵を得ながら、地域の防災力を高めたい。

 ふるさとで起きた惨事を忘れてはならない。1951年7月の豪雨による平和池(亀岡市)の決壊で計114人が、53年8月の南山城水害では大正池(井手町)決壊による鉄砲水などで計336人が犠牲となった。

 地元住民らは若い世代に伝える努力を続けている。災害の教訓を広く共有し、備えに生かしたい。