米国のトランプ大統領がイランに対する軍事攻撃を一時、承認し、攻撃の10分前に撤回していた。

 米紙などが報じ、トランプ氏もツイッターでこれを認めた。

 トランプ氏はツイッターで、米軍の無人偵察機が20日にイラン軍に撃墜されたことへの報復措置として同日夜にイランの軍事拠点3カ所を攻撃する態勢に一時、入ったと述べた。

 イラン核合意からの米国の一方的な離脱に始まる対立が、一触即発の状態にまで至っている。

 中東全域を巻き込みかねない。戦慄(せんりつ)を覚える事態だ。国際社会は衝突回避を強く働きかける必要がある。

 気になるのは、この間の米国の強硬な姿勢が、緊張をより高めていることだ。

 無人偵察機の撃墜について、イランは領空侵犯を主張しているが、米国はイラン沖約35キロの公海上空を飛んでいたと主張して、言い分は完全にすれ違っている。

 13日にホルムズ海峡で起きたタンカーへの攻撃でも、米国はイランの行為だと断定して対イラン包囲網の強化を各国に働きかけているが、広がりを欠いている。

 トランプ政権は、17日には中東に米軍千人を増派すると表明していた。いずれもイランの反発を強める結果となっている。

 米政権は昨年末以来、国防長官が不在という異常事態が続いている。こうした中、ボルトン大統領補佐官や、ポンペオ国務長官が対イラン政策を主導しているとされる。

 ボルトン氏は2003年に当時のブッシュ政権の国務次官としてイラク戦争の開戦を唱えた強硬派で、イランの政権転覆も公言している。

 今回はトランプ氏が思いとどまったが、唯一の超大国の大統領がタカ派のブレーンに振り回されかけているのは深刻な問題だ。

 一方、今回の事態でイラン国内でも保守派や対米強硬派が勢いづき、米国との対話を模索する機運が一層遠のく可能性がある。

 中東は日本にとってエネルギー供給の生命線だが、一方で米国から同盟国として共同行動を求められかねない。国際社会と連携を強め、両国に冷静な行動を働きかけたい。

 国連のグテレス事務総長は「すべての当事国が最大限に自制し、事態の悪化をあおる行動を避ける」よう強い呼びかけを行った。いまはまず、米国の自制が必要ではないか。